◎自然のバランスを崩したのは人間である
本日も、柏木隆法氏の「隆法窟日乗」から。本日、紹介するのは、「3月29日」の日乗である(通しナンバー334)。
ここ何年か、夏の終わりになると生の松茸を頂戴してきた。中国産という話だったがあの年、発砲スチロールのケースの底に敷いてあった新聞紙にハングル文字が印刷されており、北朝鮮のものであることカミわかった。今、朝鮮総連の議長宅が外為法違反、つまり密輸の疑いで家宅捜査を受けたというニュースが流れている。これが覚醒剤とか麻薬なら大いに問題だが、たかだか松茸くらいで大騒ぎするほどのことはないと思う。ならば拙なんか北朝鮮と知りつつ食していたわけであるから吐き出さなければならない。季節になればアメ横の商店街には松茸が山売りしている。国産よりははるかに安い。母などは松茸が好物で毎年この到来物を喜んで食した。国産物に比べて風味の点で負けるが、それでも拙らのような貧乏人の家庭では御馳走だった。拉致家族には悪いが犯罪を冒したとは思っていない。こうした紛争国から輸入されてきたものにはダイヤモンド、コーヒー、ピスタチオなんか物凄い量がある。国交のないキューバから輸入を止めると砂糖や葉巻の良品もストップしてしまう。拙が使っている手袋はモロッコ産で仕事で使っている。鯨や象牙はワシントン条約で輸入禁止だが、刀剣の修理には水牛か象牙が必要だから岐阜県関市に行けばどこにでも売っている。中子〈ナカゴ〉に入れる鮫皮は同じように入手は可能である。どこが悪いのか、からくり人形に使用する鯨の髯〈ヒゲ〉はエスキモーから輸入している。和筆に使用する利休鼠〈リキュウネズミ〉の髯は台湾の高砂族から輸入している。数年前、パンダの皮で作ったポシェットが台湾を経由して日本に流通した。膠(にかわ)なんか牛の骨を煮込んで作るものだが、現在は目本のどこも作っていないから台湾から輸入している。拙らが使う量はたかだか知れているが墨なんか作っているところでは入手するのに苦労していると聞いている。これらは化学製品では代用できない。北朝鮮には松茸ばかりではなく、漆や木綿などは輸出も可能なだけの生産がある。膠も必要なものであるから生産も北朝鮮でも期待が持てるといわれている。拙は農業や山林のことはあまり知らないが、ロシアのツンドラ地帯でも生産可能な原料が随分と無駄になっている。拙なんかは貧乏な家庭で育っているからむだに廃棄されている原料を見ると勿体なくて仕方がない。北朝鮮は地下資源を中国に売り渡すことで国家を維持している。これまた勿体ない話でテポドンー台でどれほどの地下資源が無駄になっているかと思うと、国家と軍備が如何に無駄なものかとつくづく思う。北道道ではエゾシカが増え過ぎて処分されているという。再び膠の話だが、刀剣の鞘〈サヤ〉の貼り合わせには鹿の膠が最高のものとされている。牛と違って脂が少ないために良質な膠がとれる。それを殺すだけで埋めている。オーストラリアではカンガルーが間引きされている。カンガルーの皮は昔から鞭〈ムチ〉の原料として用いられている。皮が柔らかい上に印伝にも使われていた。どちらにしても勿体ない話だ。神戸の河川ではボタン鍋が群れを成している。去年拙の町でも猪か増えて筍が全滅した。ときどき暴れ熊ラスカルやら川鵜が増えて鮎が全滅した。自然のバランスを崩したのは人間である。比較すれば松茸で目くじらをたてるのもどうかと思う。