◎服装は袴着用又は洋服たるべきこと(講道館)
昨日の続きである。昨日は、服部興覇著『図解説明最新柔道教範』(藤谷崇文堂、一九三三)の「付録」から、「講道館入門規則」を紹介した。本日は、「講道館柔道修業者心得」というものを紹介してみよう。
講道館柔道修業者心得
一、本館に於て柔道を修むる者は、身体を鍛錬し、精を修養し以て国家人類の為に裨益〈ヒエキ〉すべき人たらん事を期すべきこと。
一、道場に出席及び退席の節は師範席に向つて敬礼をすべきこと。
一、道場に出席の時は師範並に各役員及先進者の指揮に従ふべきこと。
一、師範並に先進者に対しては勿論、総て〈スベテ〉館員相互に礼儀を重じ〈オモンジ〉、先進者は後進の者を懇篤〈コントク〉に導き、後進の者は之に従順なるべきこと。
一、道場に出席の時は直に〈タダチニ〉出席簿に姓名を楷書に記入し稽古を為せし毎に〈ナセシゴトニ〉、其上欄に稽古したる者、互に相手の姓の頭字を記入すべし。
但〈タダシ〉無段者にして有段者と稽古せしときは有段者の分をも記入し、有段者にありでは下級者之を為す可きこと。
一、疾病〈シッペイ〉其他已むを得ざる〈ヤムヲエザル〉事故あるにあらざれば猥に〈ミダリニ〉欠席すべからざること。
一、但予定の日を限り稽古を乞ふものは、其旨幹事に届出で〈トドケイデ〉、予め〈アラカジメ〉許可を受くべし。
一、保証人又は自己転宿〈テンシュク〉の節は直ちに幹事に届け出す可きこと。
一、服装は袴〈ハカマ〉着用又は洋服たるべきこと。
一、更衣所外に於て裸体となり、域は肌を脱ぎ又は吸煙すべからざること。
一、道場内にありては、立〈リツ〉、坐〈ザ〉、共に姿勢を正しく、決して立て膝、横臥〈オウガ〉、胡坐〈アグラ〉、懐手〈フトコロデ〉又は足を投げ出す可からず。
一、存京者は師範及同所の者に対して、新年を賀する為めに毎年一月一日〈イチガツイチジツ〉より七日〈ナノカ〉迄に鏡餅〈カガミモチ〉壱重〈ヒトカサネ〉を贈呈すべきこと。
以上の「心得」の中で、まず目を引くのが、「服装は袴着用又は洋服たるべきこと」という規定である。講道館は、こういう形で、館員のレベルを維持すると同時に、その「風紀」を統制しようとしたのであろう。
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