◎産児制限の如きは神意に反する(東條英機)
東京憲友会編『殉国憲兵の遺書』(研文書院、1982)から、東條英機の「遺言」を紹介している。本日は、その二回目。改行、用字、仮名づかいは『殉国憲兵の遺書』のままとした。
今次戦争の指導者たる米英側の指導者は大きな失敗を犯した。第一は、日本という赤化の防壁を破壊し去ったことである。第二は、満州を赤化の根拠地たらしめた。第三は、朝鮮を二分して東亜紛糾の因たらしめた。米英の指導者は之を救済する責任を負うて居る。従ってトルーマン大統領が再選せられたことは、この点に関して有り難いと思ふ。
日本は米国の指導に基き武力を全面的に抛棄した(註―憲法第九条)。これは賢明であったと思う。しかし世界全国家が全面的に武装を排除するならばよい。然らざれば、盗人が跋扈する形となる。(泥棒がまだ居るのに警察をやめるやうなものである)
私は戦争を根絶するには慾心を人間から取り去らねばならぬと思う。現に世界各国は、孰れも自国の存在や自衛権の確保を主としている。(これはお互に慾心を抛棄して居らぬ証拠である)国家から慾心を除くということは不可能のことである。されば世界より今後も戦争を無くするということは不可能である。これでは結局は人類の自滅に陥いるのであるかも判らぬが、事実は此の通りである。それ故、第三次世界大戦は避けることが出来ない。
第三次世界大戦に於て主なる立場に立つものは米国及びソ連である。第二次世界大戦に於て、日本と独乙というものが取り去られてしまった。それが為、米国とソ連というものが、直接に接触することとなった。米・ソ二国の思想上の根本的相違は止むを得ぬ。この見地からみても第三次世界大戦は避けることはできぬ。
第三次世界大戦に於いて極東、日本と支那と朝鮮がその戦場となる。此の時にあって米国は武力なき日本を守るの策を立てなければならぬ。これは当然米国の責任である。日本を属領と考えるのであったならば、また何をか言わんや。そうでなしとすれば、米国は何等かの考えがなければならぬ。米国は日本人八千万国民の生きて行ける道を考えてくれねばならない。凡そ生物として自ら生きる生命は神の恵である。産児制限の如きは神意に反するもので、行うべきでない。【以下、次回】
文中、トルーマン大統領が「再選」されたことに触れている。トルーマン大統領が、大方の予想を裏切って再選されたのは、1948年(昭和23)11月のことであった。このことから、この「遺言」が書かれたのは、1948年(昭和23)11月もしくは12月のことだったことがわかる。
今日の名言 2023・7・13
◎およそ生物として自ら生きる生命は神の恵みである
東條英機の言葉。上記コラム参照。生命は「神」の恵み、と言っているが、東條は、この宗教的な生命観を、どこから、どのようにして得たのだろうか。なお、晩年の東條が、浄土真宗に深く帰依したことは、よく知られている。処刑の直前に詠んだ歌のひとつに、「さらばなり 有為の奥山けふ越えて 弥陀のもとに 行くぞうれしき」がある。