◎ビルマ国ウー・バー・モウ首相の演説
情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)の紹介に戻る。
本日は、「二、各国代表の演説」の部から、「ビルマ国代表 内閣総理大臣ウー・バー・モウ閣下演説(訳)」の章を紹介する。
ビルマ国代表 内閣総理大臣ウー・バー・モウ閣下演説(訳)
議長並に〈ナラビニ〉閣下、茲に卑見を開陳するに当りまして、私は些か〈イササカ〉ためらひを感じるものであります。蓋し〈ケダシ〉本会議の如き場合に於ては、我々一同の胸中には唯一つの考〈カンガエ〉のみがあることは寧ろ当然でありまして、言ひ現す言葉は色々でありませうが、我々には同一の心、同一の意思、同一の目的から生れ出づる唯一つの考があるのみであります。従て私の所見中には既に各代表に依り開陳せられました思想なり、感情なり、事実なりが屡〻繰返されるであらうことも之亦当然のことであります。併し、それでも私はその様に繰返し申述べることに意義ありと考へるものでありまして、それは蓋しビルマ国も亦同一の考を有すること明かにしなければならないからであります。
或る意味に於て私は既に各代表が述べられましたのと同じ言葉を語り、同じ所見を御伝へせんが為に本国より参つたとも申し得るのでありまして、それは結局我々一同が同じ所見を有して居るからであります。此の席に起つて〈タッテ〉周囲を眺めますとき、私の胸に浮かんで参りますのは過去に於て政治情勢の然らしむる所に依り、西洋に於て出席を余儀なくせられたる諸会議の想ひ出であります。成る程是等の会議に於きまして多数の人々が相集ひ〈アイツドイ〉、お互に鄭重に取扱ひ、談笑を交し、各種の事柄、就中〈なかんずく〉天候其の他に付いて論議致しました。併しながら私は常に他処者〈ヨソモノ〉が他処者の中に在る感じを免れることが出来ず、恰も〈アタカモ〉古代ローマに於けるギリシヤ人奴隷の如き感を抱くのが常であつたのであります。【以下、次回】
ビルマのウー・バー・モウ首相は、冒頭で、「議長並に閣下」と呼びかけているが、これは、大東亜会議の議長を務めた、東條英機首相を指していると思われる。