◎統帥権独立の思想は間違っている(東條英機)
東京憲友会編『殉国憲兵の遺書』(研文書院、1982)から、東條英機の「遺言」を紹介している。本日は、その三回目(最後)。改行、用字、仮名づかいは『殉国憲兵の遺書』のままとした。
なお言いたき事は、公・教職追放や戦犯容疑者の逮捕の件である。今は既に戦後三年を経過しているのではないか。従って、これは速やかに止めてほしい。日本国民が正業に安心して就くよう、米国は寛容な気持ちをもってやっていってもらいたい。
我々の処刑を以て一段落として、戦死傷者、戦災死者、ソ連抑留者の遺家族を慰安すること。戦死者、戦災死者の霊は遺族の申出あらば、これを靖国神社に合祀せられたし。出征地に在る戦死者の墓には保護を与えられたし。従って遺族の希望申出あらば、これを内地へ返還せられたし。戦犯者の家族には保護を与えられたし。
青少年男女の教育は注意を要する。将来大事なことである。近時、いかがわしき風潮あるは、占領軍の影響から来て居るものが少くない。この点については、我国の古来の美風を保つことが大切である。
今回の処刑を機として、敵・味方・中立国の国民罹災者の一大追悼慰安会を行われたし。世界平和の精神的礎石としたいのである。
勿論、日本軍人の一部の間に間違いを犯した者はあろう。此等については衷心謝罪する。これと同時に無差別爆撃や原子爆弾の投下による悲惨な結果に ついては、米軍側も大いに同情し憐憫して悔悟あるべきである。
最後に軍事的問題について一言する。我国従来の統帥権独立の思想は確に間違っている。あれでは陸海軍一本の行動は採れない。兵役制については、徴兵制によるか、傭兵制によるかは考えなければならない。我が国民性に鑑みて再建軍の際に考慮すべし。
再建軍隊の教育は精神教育を採らなければならぬ。忠君愛国を基礎としなければならぬが、責任観念のないことは淋しさを感じた。この点については、大いに米国に学ぶべきである。
学校教育は従前の質朴剛健のみでは足らぬ。人として完成を図る教育が大切だ。言いかえれば、宗教教育である。欧米の風俗を知らすことも必要である。俘虜のことについては研究して、国際間の俘虜の観念を徹底せしめる必要がある。
【一行アキ】
辞 世
我ゆくもまたこの土地にかへり来ん国に酬ゆることの足らねば
さらばなり苔の下にてわれ待たん大和島根に花薫るとき
末尾に、辞世がふたつ挙げられていた。ひとつ目の辞世に、「かへり来ん」(かへり来む)とあるが、これは「帰ってくるだろう」の意味。「来ん」の読みは、「こん」であろう。
明日は、話題を変える。
※昨日の夕方、ヒグラシの声を聞いた。記憶では、昨年は、たしか一度もヒグラシの声を聞かなかった。