日本では毒ヘビに咬まれて死ぬ人の数よりも
ハチに刺されて死ぬ人の数の方が多いとされています。
ただ、だからといって毒ヘビが怖くないわけではありません。
ハチの方が母集団が多いだけで、
刺された(咬まれた)後の重症化率は毒ヘビの方が高いと思われます。
ハチに刺されて死ぬ原因となるのはアナフィラキシーショック。
毒そのものよりも、実は体のアレルギー反応が怖いんです。
これは早期に医療機関を受診すれば救命率はかなり高いと思います。
一方、毒ヘビ(以下代表してマムシ)は毒自体がハチよりも強烈なだけでなく、
治療薬である抗毒素血清に対するアレルギー反応
(アナフィラキシーショック)の発生率が非常に高く、安易に使えないという難しさもあります。
よく漫画なんかで毒を盛られた人が抗毒素血清を必死に奪い取ろうとするシーンがありますが
その抗毒素を使ったとしても、それが原因で死にうることを十分理解しておくべきですね(笑)
そもそもそれだけ副作用の怖い抗毒素のくせに
どの程度毒を無効化できるのかはっきり分かっていないという―
症状としては咬まれたところから体幹に向かって激痛、皮下出血、腫脹がどんどん進行します。
止血機構が壊れて血が止まらなくなります。
腎臓がやられておしっこが正常に作られなくなります。
神経系に毒が作用して目がかすんだり見えにくくなったりします。
これらの症状がそろえばかなり重症。
命にかかわるので、副作用で死ぬ危険もある抗毒素血清を使わざるをえなくなるわけです。
そして最も厄介なのは使ったからと言って治るとは限らないこと…。
マムシの毒の怖さ、分かっていただけましたでしょうか。
大切なのはマムシが出そうな場所に近づかないことです。
特にこの季節はマムシに咬まれる人が多いので、そういう環境にいる人は気を付けてください。
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もし咬まれたらどう対処するかについても書いておきます。
先に断っておきますが、本によって推奨されている内容が結構違います。
何種類か本を読んだ上での自分の結論なので参考程度にとどめてくださいね。
まずはなるべく早く毒を口で吸い出すこと。
成書には清潔な器具でとあるんですが…どんな器具を使えというんだか。
そんなものを用意している間にどんどん毒が全身にひろがっていきそうな気がする。
創部の感染予防から素人は何もするなと書いてあるのもありますが、
毒が全身に回るよりも創部感染の方がコントロールが容易だと思います。
とはいっても人の口は相当汚いので、その後に水道水などで洗い流したほうがいいとは思います。
実は、犬にかみつかれるよりも人にかみつかれた方が傷が膿みやすいんですよね。
咬まれたところよりも体に近いところを軽く縛っておくのも、ある程度は効果がありそうです。
この処置にも賛否両論ありますが、
病院に行くまで軽く縛っておくのは悪くないのではないかと思います。
その際、血流がなくなるほどきつくは縛らないことがポイント。
また、咬まれた部位をなるべく高く上げないようにした方がいいかもしれません。
さらに毒が血流に乗って全身に回らないよう、なるべく安静にしておくべきです。
あとは何よりなるべく早く大きな病院に行くこと。
抗マムシ血清は小さな診療所には普通ありません。
使うにしてもなるべく早い方が効果が大きいとされ、6時間内の投与が推奨されています。
抗毒素血清投与を決断してからもすぐに使えるわけではありません。
副作用予防ため、1000倍希釈液から何度も皮下に試し打ちし、
アレルギー反応が起こらないのを確認してようやく投与できます。
そのテストにも時間がかかるので少しでも早く受診したほうがいいわけです。
また、患部を冷やしておくのも自覚症状軽減にはなるかもしれませんが、
治療的な効果は期待できないようです。
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血清投与を必要とするマムシ咬傷患者を受け持ったので少し勉強しました。
マムシは臆病だから自分から逃げていく、
こちらから手出ししない限り咬みつかれることはないなんて言う人もいますが、
その患者さんは草刈りしていて突然咬みつかれたそうです。
そんなの避けようがない。
みなさんも屋外に出るときはご注意ください。
なお、アオダイショウの幼蛇はマムシに擬態していると言いますし、
マムシに咬みつかれても毒が体に入らなければ特に問題ないこともあります。
軽傷で抗マムシ血清を使わずに済むこともあります。
しかし、マムシかもしれない蛇に咬みつかれたと思ったらすぐに病院に行ってくださいね。
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繰り返すようですが、この記事の内容は個人的に勉強した内容であり、
治療の正当性は保証しかねます。