風吹く豆腐屋

内容はいろいろ。不定期更新中。

"Do you need a translator ?"

2017-10-23 20:53:39 | Weblog

ときどき診察に英語が求められることがあります。

患者の多くは海外からの旅行者。

旅先で体調を崩してとりあえず近くの病院に飛び込むというケースが意外とあるようです。

 

このご時世、スマホをはじめいろいろ便利なデバイスあるし、

何かを見ながらとか調べながらだと何とかなるかな・・って思うでしょ?

でも、これが意外と難しいんです。

単語を一つ一つ調べながらでは時間がかかるし、

単語レベルであっても自分が意図した翻訳になっているか確認が必要。

文章の自動翻訳なんてもってのほかです。

まずは自分だけである程度コミュニケーション取れないとダメなんです。

人を前にしてスマホを必死に触っているのも気まずいですしね。

 

診察が終わったあと、どういうフレーズが必要だったのか調べてみました。

「直腸診します」は何と言うべきだったのかな・・

→ I will diagnose my rectum (!)

・・・まだまだ自動翻訳は発展途上です。

 

今回はアジアからの観光客でした。

ネイティブと違って単語を切ってくれるので聞き取れるんですが、

何せ僕のアウトプットができない。

そこで言われたのが"Do you need a translator ?"です・・

日本語の話せる友人がいるから電話越しに通訳してもらおうかと提案されました。

 

屈辱でしたがそうさせてもらいました。

そのほうが早いんだもん。

しかし医者のくせに英語も話せないんかみたいな視線はこたえたな・・

 

今は子供の習い事として英語が最も人気らしいですが、それも納得です。

せめて子供には・・ってみんな同じこと思ってるんだろうな。


ささやかな幸せ

2017-10-16 21:39:37 | Weblog

日曜日の夜中に研究室に行って実験をしていた際、計算間違いに気が付きました。

1週間かけて用意したサンプルに使った試薬の濃度を間違えた・・

何が最悪ってその実験自体が他の試薬の計算ミスのための再実験だったということ。

二重に間違えるというどうしようもないへまをやらかしました。

試薬も安くないし、時間もかけたのに・・・

 

夜中にどんよりした気分のまま雨に濡れながら家に帰りました。

 

翌朝、月曜日。

出勤の準備をしていたら、娘が「バパー」と言いながらハイハイで寄ってきて、僕の足でつかまり立ちしました。

 

ああ・・・、かわいい。

 

嫌なことがあっても、それを補ってくれることがあるのは幸せなことだなと思いました。

 


カラオケで楽器演奏を採点する

2017-10-09 13:41:06 | Weblog

少し前にテレビで「プロのギタリストはカラオケの採点で高得点を出せるか?」という企画を見ました。

使う機種はDAMで高得点の基準は95点以上、挑戦は3回までとされていました。

その方はなかなか苦戦していましたが、3回目に成功されていました。

 

最近、真面目な演奏は全くしていません。

せいぜい夜な夜なカラオケに楽器持ち込んで、歌う代わりに弾いているくらいです。

カラオケのチープな音源相手でもある意味「合奏」ではあるので、それはそれで楽しいんですよね。

しかもうちから一番近い某カラオケ店だと,平日の夜1人1時間で300円,1.5時間で420円となかなか安いです。

 

そんなときにカラオケの採点もしてみるんですが、

机にマイクを置いたのではきちんと音を拾ってくれずろくな点が出ません

(そしてひどい得点を見て若干凹む 笑)

バイオリン用マイクを使えば95点出るかなと思って、試してみました。

 

僕はバイオリン用マイクとしてオーディオテクニカのPRO35というのを持っています。

弦楽器に限らず管楽器にも対応しているマイク・・・ということですが、

このマイク、コンデンサーマイクというマイクで「ファンタム電源」がないと全く機能しません。

数年前、無知な僕は買ってからその事実を知り、

急きょミキサーを追加で購入してようやく使えるようになりました。

結局買うだけ買って活用できていませんが…

 

今回はこのようにミキサーをかますことで想定通り楽器のマイクを拾ってくれました。

 

 

今回試してみるにあたって、特に追加で購入するものはありませんでした。

(注:マネしてもらうのは構いませんが、それによって生じたトラブルについては僕は責任取れません)

 

 

それでは結果の方ですが

 

・・・できませんでした。

 

少なくとも3回の挑戦ではできませんでした。

 

選んだのはひたすらスピッツ。

好きだからというよりは他の曲だと「サビ」じゃない部分を知らないから。

 

定番ロビンソン 94.702

 

結婚式でも流した楓:94.890

 

フェイクファー:94.603 「表現力」の低さが際立つ

 

大宮サンセット:95.040 唯一超えたけどその理由はよく分からない

 

写真撮ってないのもあるので、成功率としては10%程度でした。

 

「表現力」が限定要因になっているのでネットで調べてみたところ

「6分割した各セクション毎に強弱がついているかどうか」という定義のようです。

曲全体のうち一番盛り上がるところで大きな音が出ていればいいわけではなく、

高得点を取るためにはマイクを話したり近づけたりするところを各所に作ればいいのだとか。

 

なんだそりゃ。

 

でもまあ、そうと分かっていれば高得点取れそうですね。

マイクの小手先テクニックは使えないけど、音量の調整は容易。

今回、音を拾わないことをおそれて常に大きめで弾いてみましたが、その辺の調整も加えれば点数伸ばせそうです。

 

ちなみに音程の判定は比較的甘く感じました。

最初外してもポルタメントで調整すれば「しゃくり」でOKと判定されるみたいだし。

 

高得点がすなわちいい演奏というわけではありませんが、数値化してみるのは面白いですね。


「飲んではけない抗生物質」

2017-10-02 23:41:24 | Weblog

少し前に週刊誌で「飲んではいけない薬」が話題になっていました。

定期的にこういう話題が出てきますね。

あういうセンセーショナルなことを言う人は

往々にして根拠の乏しい個人的な感想を言っているだけなので、気にしなくて構いません。

(尤もこの記事も出典が怪しい情報も載せていますので、話半分に読んでください 笑)

 

ただ、中にはまともな先生がまともなことを書いている項目が紛れ込んでいます。

具体的には「経口抗生剤」の項目がそう。

感染症の分野で有名な神戸大の岩田先生が「フロモックス」「メイアクト」「クラリス」をあげていたようです。

クラリスは少し種類が違いますが、フロモックス、メイアクトは僕も嫌いな薬です。

 

以下は第三世代経口セフェム系の抗生物質に分類されるもので、

風邪の時やけがの時の「化膿止め」としてよく処方される薬です。


①「フロモックス(セフカペンピボキシル)」(不明)

②「メイアクト(セフジトレンピボキシル)」(16%)

③「セフゾン(セフジニル)」(25%)

④「トミロン(セフテラムピボキシル)」(不明)

⑤「バナン(セフポドキシム)」(50%)

 

これらの薬、内服するメリットよりもデメリットのほうが大きい、百害あって一利なしの薬です。

( )の数字はバイオアベイラビリティ(bioavailability)という数字です。

簡単に言うと飲んだ薬のうち、どれだけが血中に移行するかを表す数値です。

(サンフォード感染症ガイド2013にきちんとした記載があるそうなので、気になる人はそっちを見てね)

 

特によく処方される上の3剤のバイオアベイラビリティなんて10-20%(!)

つまり、飲んでも吸収されないんです。

当然、一般的な処方量じゃ細菌をやっつけるだけの血中濃度に達し得ないんです。

(参考までに同系統の抗生物質の点滴ではは普通1g*2-3回/日で投与しますが、

これらの経口抗生剤は100㎎*3錠/日ぐらいの量で処方されます。それの10-20%がどれだけ低い数値か・・)

「でも薬を飲んだらよくなったよ?」

それは薬に関係なく自然に軽快したにすぎません。

 

この薬に限らず、厚生労働省が日本で抗生剤があまりに乱用されることを憂いて

無駄な抗生剤処方はやめるように通達をだしています。

→ネットで読めます

これによれば一般的な診療所の外来を受診するほとんどの患者で抗生剤が不要ということになります。

 

それもまあ極端なので、飲み薬の抗生剤を出したいと思ったら何を出すか

①ペニシリン:サワシリン

②第1世代セフェム:ケフラール

この辺が僕は好きです。

バイオアベイラビリティ80-90%だし、僕が飲み薬でやっつけたいと思う細菌はほとんどこれでカバーできます。

 

第3世代セフェム系抗生剤は点滴として使うときは非常な強力なツールとなります。

ところが、経口抗生剤を飲んだせいで病原性を持った耐性菌が増えてしまうと、いざ必要な時に抗生剤治療が効かなくなります。

また、吸収されないということはそのまま便中に排泄されやすいということ。

腸内細菌叢がめちゃくちゃにかき乱され「偽膜性腸炎」という抗生剤投与に特有な副作用が出やすいとの指摘もあるようです。

ただ、僕が添付文章に書いてある情報を見た限りでは他の抗生剤に比べ極端にそのリスクが高いというほどのことはなさそうでした。

 

いずれにしたって、飲む必要ないんですから飲まなければいいんです。

みなさんも「念のために抗生剤出しておきますね」と言われて経口第3セフェムが処方されそうなら、

断るか第1セフェムまたはペニシリンに変えてもらってください。

 

 

 

本文とは全く関係ないけど、この前言ってきた学会会場の写真。

横浜っておしゃれな街ですね。