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二重であろうが一重であろうがダメな物はダメ

2020年10月13日 16時44分00秒 | 都構想・IRカジノ反対!
 
9月26日にクレオ大阪中央(大阪市天王寺区)で開催された大阪市主催の都構想住民説明会で、私が提出していた質問票に対して、都構想実施主体の大阪府・大阪市合同副首都推進局から、局長名で後述の回答がメールで来ていました。その詳細ならびに回答に対する私の感想を次に書いておきます。
 
まず私が質問票に書いた下記5点の質問事項を改めてここに示しておきます。
 
①二重行政が悪だと言うなら他の政令指定都市はどうなる?他も全て府県との二重行政になってしまう筈だ。しかし、他の政令指定都市でこんなに大騒ぎになっている所はどこにもない。何故、大阪だけずっとこんな騒ぎになるのか?         
 
②そもそも二重行政の一体何が悪いのか?知事と政令市長の意見が異なる案件については、両者とも簡単に賛同出来ないのは当然の事。そこから議論を戦わせ、論点をすり合わせて、一致点を探るのが民主主義ではないのか。それを、維新みたいに「全て選挙で決着を付ける。たとえ51%の得票でも勝ちは勝ち。敗者は無条件に従え」と言っていたのでは、対立が深まるばかりだ。しかも、最初の住民投票で都構想否決の民意が示されたにもかかわらず、「僅差だったからもう一度やる」と言うのは、単なるワガママ、ゴネ得でしかない。
 
③歴史も学部構成も異なる市立大学と府立大学を何故無理やり統合するのか?学問探究を単なるコストとしか考えていないからではないか?学生の声も聞かずに、市長と知事だけで、そんな勝手な事して良いと思っているのか?数ある施設統合策の中でも、これが一番納得出来ません。
 
④近くに府立病院があるからと言って住吉市民病院を廃止しながら、府立病院(現・急性期総合医療センター)を紹介状患者しか見ない金持ち専門病院に変えてしまい、一般患者を放り出してしまった事に対して、責任をどう取るのか?
 
⑤大阪市があるからこそ、西成あいりん地区の特別清掃事業も実施出来た。しかし、都構想で大阪市が廃止され、西成の事に疎い新・中央区の役人によって同事業も廃止されてしまうだろう。ホームレスを見殺しにするのか?
 

それに対して、副首都推進局から、10月12日に局長名で回答がメールで寄せられました(回答日付は10月9日)。下記がその回答文です。

*****

平素は、大阪市政にご理解、ご協力を賜り誠にありがとうございます。

早速ですが、お寄せいただきました「特別区設置協定書に関する質問」についてお答えいたします。

ご質問いただきました「二重行政が悪だというなら他の政令指定都市はどうなる?」「他の政令指定都市でこんなに大騒ぎになっているところはどこにもない。」「なぜ大阪だけこんな騒ぎになるのか?」につきましては、都道府県と政令指定都市との間の二重行政を解消し、調整するための協議の場として、平成28年度に地方自治法が改正され、指定都市都道府県調整会議がすべての都道府県と指定都市の間で設置されています。また、政令指定都市において、さまざまな検討が行われています。

それぞれの大都市の状況に応じて、それぞれにふさわしい大都市制度を検討するものであり、大阪においては、大阪の成長のスピードアップを図るとともに、住民に身近な行政の充実を図るためには、大阪府市を再編することで、広域行政は府に一元化し、大阪市をなくして基礎自治体として4つの特別区を設置する特別区制度(いわゆる大阪都構想)が必要と考えています。

次に、「そもそも二重行政の一体何が悪いのか?」「最初の住民投票で都構想否決の民意が示されたにもかかわらず、「僅差だったからもう一度やる」というのは、単なるワガママ、ゴネ得でしかない。」につきましては、東京一極集中や生産年齢人口の減少、超高齢社会の到来などの大阪の課題の解決に向け、大阪府と大阪市では、大阪の成長・発展に向けて取り組んできましたが、かつては相乗効果が発揮できず、二重行政が発生するなど、大阪の強みを十分に活かしきれていませんでした。

現在は、知事・市長の方針を一致させ、連携・協力することで、万博開催準備やインフラ整備など、大阪の成長への流れをつくってきました。

今後、この成長の流れを止めることなく、また、広域機能の一元化により生み出される成長の果実を住民の皆さんに還元していくため、大阪の成長をより強力かつスピーディーに進める体制づくりと、身近なことは身近で決めることができる仕組みづくりが必要です。

このため、広域行政の司令塔を大阪府に一本化し、二重行政を将来にわたり制度的に解消させるとともに、住民に身近なことは、住民に選ばれた区長・区議会が決定する特別区制度(いわゆる「大阪都構想」)の実現が必要と考えています。

そして、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づき、大阪府議会及び大阪市会の両議会の議決を得たうえで、大都市制度(特別区設置)協議会が設置され、特別区設置協定書が作成されました。その後、同協定書について、府市両議会で審議され、承認の議決がなされました。これを受け、大都市地域における特別区の設置に関する法律に基づき、住民投票が実施されるものです。

次に、「「大学の統合」について、歴史も学部構成も異なる市立大学と府立大学を何故無理やり統合するのか?学問研究を単なるコストとしか考えていないからではないか?学生の声も聞かずに、市長と知事だけで、そんな勝手な事して良いと思っているのか?数ある施設統合策の中でもこれが一番納得出来ません。」につきましては、大学の統合については、2012(平成24)年に「新大学構想会議」を府市で共同設置して以降、府・市・両大学で協議を重ねてきました。府市両議会で新設合併が議決され(府:2017(平成29)年11月、市:2018(平成30)年2月)、2019(平成31)年4月法人統合されました。

市立大学と府立大学の統合によって、文系から理系・医学・獣医学まで幅広い分野をカバーし、学生数でも東京都立大学を抜いて、公立大学ではわが国最大の公立総合大学となります。両大学の統合の狙いは、このポテンシャルを最大限に活かすことで、教育力、研究力及び地域貢献力の向上が図られることにあります。これにより、大阪の発展を牽引することが期待されます。また、大学の基本的な機能である「教育」「研究」「社会貢献」の3つの機能に加え、「都市シンクタンク」「技術インキュベーション」の2つの機能を備えた大学として、大阪の発展を牽引する「知の拠点」をめざします。

次に、「西成あいりん地区の特別清掃事業はどうなるのか。」につきましては、あいりん地域は、全国各地から労働者が流入し労働施策など社会全体の課題がこの地域に集中してきた経過があり、個別の取組みや一基礎自治体での取組みを超えた広域的な課題であるため、あいりん地域の諸課題が解決するまで地域の実情に精通した特別区と連携しながら大阪府が、「あいりん日雇労働者等自立支援事業」などの事業を実施することとしています。

貴重なご質問ありがとうございました。(以下略)

*****

私、これを読んでホトホト呆れました。私の質問に全然答えていないからです。

まず質問①に対する回答について。「他の政令指定都市も、都道府県との間で指定都市都道府県調整会議を設置して、さまざまな検討が行われるようになった」と。「別に大阪だけが大騒ぎしているんじゃないよ」と言う訳です。私は、大阪の大騒ぎに他の政令指定都市も巻き込まれて、仕方なく設置せざるを得なくなったと思っています。だから、大阪市を一旦廃止してしまったら、もう二度とやり直しが出来ない大都市法(大都市地域特別区設置法)のような欠陥法令が、付け焼き刃で決まってしまったのです。でも、これは大阪以外にも早晩起こり得る事なので、取り敢えずこの回答で了承しておきます。

問題は次の質問②に対する回答です。ここで局長は次のように回答しています。東京一極集中や生産年齢人口の減少、超高齢社会の到来などの大阪の課題の解決に向け、大阪府と大阪市では、大阪の成長・発展に向けて取り組んできましたが、かつては相乗効果が発揮できず、二重行政が発生するなど、大阪の強みを十分に活かしきれていませんでした。現在は、知事・市長の方針を一致させ、連携・協力することで、万博開催準備やインフラ整備など、大阪の成長への流れをつくってきました。」と(画像の赤枠部分)。

ここには二重の誤りがあります。その一つは、「政策の誤り」を「制度の誤り」にすり替えてしまっている点です。東京一極集中も少子高齢化(生産年齢人口の減少)も、国の政策の誤りによるものです。例えば最低賃金。東京都の時給1013円に対して沖縄県や青森県はわずか790円。こんな事やっていて東京一極集中が止まる訳がないでしょう。少子高齢化も、企業が正社員を非正規雇用に置き換え、国がそれを後押ししたから、若者が結婚もマイカー・マイホーム購入も諦めざるを得なくなったのが根本原因です。幾ら二重行政を無くして広域行政を大阪府に一本化した所で、大阪府が誤った国策の後追いをしている限り、誤りは無くせません。

もう一つの誤りは、それを数の大小の問題にすり替えてしまっている点です。間違った政策は、たとえ「二重」であろうと「一重」であろうと是正しなければなりません。都構想推進派は、WTCとりんくうタワーの二つを槍玉に上げて、「二重行政さえ無くせば、こんな無駄なビル建設競争なぞせずに済んだ」と言いますが、無駄なビルは本来一棟でもあったらダメなのです。ところが大阪府の松井知事も、大阪市の吉村市長も、万博やカジノに入れあげるばかり。これでは、WTCやりんくうタワーが、万博やカジノに化けるだけです。本当に大阪の景気を良くしようとするなら、こんな「打ち上げ花火」頼みのやり方ではなく、中小企業の経営やサラリーマンの生活をもっと支援し、景気の底上げを図るしかありません。

この二重の誤りが、次の質問③に対する回答にも如実に現れています。ここでは「府立大学と市立大学を統合して、我が国最大の公立大学にする事で、文系から理系まで幅広い分野をカバーし、学問研究や大阪の発展に貢献出来る」とあります。でも、大学なんて数が多ければ多いほど、受験機会も増えて、学問研究の選択肢も広がるのではないですか?勿論、粗製乱造はいけません。質の充実が前提条件です。質さえ保障されるなら、大学なんて幾つあっても良いじゃないですか。逆に、数を幾ら減らしても三流大学では意味がない。そう考えると、府大も市大も、決して三流大学では無かったのに、何故、無理やり統合してしまったのか?これでは「経費削減まず先にありき」だと言われても仕方ありません。

そして質問④に対する回答がありませんでしたが、これにも同じ事が言えます。幾ら数を減らした所で、それに見合うだけの質の充実が無ければ無意味です。ところが、府立病院でカバー出来ない患者を住吉市民病院でカバーしていたのに、後者を無理やり潰して、前者も紹介状持参患者しか診ない金持ち専門病院に変えてしまったら、一般患者は一体どうなるのか?ちゃんと質問に答えて下さい。

質問⑤に対する回答も、私の疑問に応える物ではありませんでした。「あいりん地区の課題解決は、特別区だけで担える業務ではないので、大阪府が地元の特別区と連携しながら行う」という回答でした。ところが、大阪市廃止後に設置される地元の新・中央特別区は、今の中央・浪速・西区から、大正・西成・住之江区まで抱え込む事になります。残すとされる「区役所」も、実際は「特別区の下に設置される地域自治区の事務所」に過ぎません。「地域自治区」には「区長」も「区議会」もありません。諮問機関で決定権のない「地域協議会」が置かれるだけです。これでは単なる「下請け」です。

その中で、新・中央特別区の財政を支えるのは、あくまでもミナミなどの繁華街を抱える中央・浪速区や、高額納税者のタワマン住民が住む西区です。それらの区民が、西成の日雇い労働者や大正下町の商店主の事をどれだけ知っているでしょうか?はっきり言って「お荷物」ぐらいにしか思っていないのではないでしょうか?大企業や金持ち連中から選ばれた区長や区議会議員が支配する特別区で、果たしてどれだけ「ニア・イズ・ベター」な区政が実現されるでしょうか?そんな事なら、まだ今の西成区や住之江区が機能する大阪市のままの方が、よっぽどマシです。

「二重」であろうが「一重」であろうが、ダメな物はダメです。大阪市が無くなり、中途半端な特別区に置き換えられるぐらいなら、まだ今の大阪市のままの方が良いです。


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