猿倉口コース上部のスノーモービルのトレース
1. スノーモービルとの遭遇
3月4日 鳥海山の猿倉口から七ッ釜小屋を経由し、七高山に登頂してフォレスタ鳥海から往復したが、ここでスノーモービルのトレースの有様に愕然としてしまった。以前から話には聞いていたものの、普段我々山スキー・ボーダーが慣れ親しんでいる鳥海山の無垢の斜面が、キャタピラの跡によって荒らされ、実に無残な光景となっていたのだった。
そういえば2005年の4月10日、上ノ台コースを辿って七高山を往復した時、祓川方面からスノーモービルのグループが上って行き、驚いたことに7~8台のマシンが七高山まで駆け上がる光景を目にした。まさかこんな所までとは予想もせず、驚きと同時に呆れ、そして落胆してしまった。獅子小屋からはだいぶ距離はあったが、フルスロットルのエンジン音は鳥海山東面の全般に響き渡り、厳かな冬の大自然の静寂をぶち壊しにしていた。
我々もすっかり驚いてしまったが、それ以上にこの時期にも生息するカモシカ、野ウサギ、テン、そして冬眠中の熊などにはどんなストレスを与えているだろうか?この暖冬の年の露出した植生に与える影響は無いのだろうか?普段はあまり関心のなかった自然環境への疑問だが、その当事者となってみると関心を持たざるを得ない。
また、今シーズンの1月21日(日)、大井沢から赤見堂を目指した時、北側の鍋森山の山頂付近にスノーモービルのグループを確認した。おそらく月山第1トンネル付近から鍋森山山頂を目指したものと思われるが、かなり距離があるとはいえ、あの好きになれない2サイクルのエンジン音がこだましていた。私はまだ未確認だが、これ以外にも湯殿山の南面周辺も同様なことになっている様だ。
2. 遅れてやってきた山スキーヤー
このスノーモービルの乗り入れについて、最も影響を受けまた関心を持ざるを得ないのは山屋さんたち、とりわけおいしそうな無限の斜面を共有する山スキーヤー・スノーボーダーだろう。特に春スキーでは全国的に名の知れた鳥海山・月山は、この時期は長い歴史を持つ山スキーヤーにとって殿堂であり、誉れのスキーエリアであった筈だ。しかし昨今そんな事とは無関係に、我々以上に行動範囲を広げ、厳冬期の厳しい時期にも関わらず活動しているのは、パワー溢れる機械力を駆使したスノーモービルの軍団だった。
山スキーヤーの多くは3月後半から5月にかけて活動する方が多いが、スノーモービルのグループは天候が許せば厳冬期でも活動している。今年のような暖冬の年なら、12月から鳥海山の七ッ釜小屋周辺に出没し、好天の時は殆ど毎週のようにキャタピラの跡を刻んでいる様です。すなわち、山スキーヤーのあまり訪れない12月~4月頃が最盛期で、その間は殆ど貸切状態といっても良い状況なのです。
もしかするとスノーモービルの方々は山スキーヤーをのバッティングを避け、あえてこの時期を選んでいるのかもしれないが、もしそうであるならば、いつの間にか山スキーヤーとの住み分けが形成され、ある意味での既得権を享受しているとも言える。つまり、山スキーヤーがまったく知らぬ間にこの時期の勢力地図が形成され、いつの間にか我々は後追いのグループとなり、彼らが圧倒的な存在になったとも見えてくる。ただ、この時期で山スキーヤーがスノーモービルの一団と遭遇する事は少なく、今の所実質的にトラブルになったり敵対意識をあらわにする事は少ないが・・・。
しかし我々が反省しなければならないには、多くの方がこの最近の現状を知らない事と、この問題に関してスノーモービル愛好家以上に不勉強で、また無関心であった事だと思う。なぜならば、この国立公園または国定公園に関して、いったいどの様な法的規制が有り、なぜこの様な現状がまかり通っているのかについて、基本的な知識さえ持ち合わせていない方が多いからです。その為、ただ感情的に反対を唱える前に、少しでも多くの状況を確認して現状の認識を深め、我々山スキーヤーとしての基本的なスタンスを固めることが必要になってくる。それと、多くの山スキーヤーに関心を持ってもらい、スノーモービル愛好家を含めての、積極的な意見の交換が必要になってきたとも思います。 続く。