今年度沢登りの総決算と言う程のものではないが、今シーズンは湯沢スラブでのつまずきから始まり、所用で2回のドタキャンを含めてあまり山に行けず、大きな成果の無い年だった。沢では山スキーのような未開拓コースは少なく、日帰りコースであまり人の訪れないような、未知の要素を追い求めようとしても難しい。
今年は登り損ねた朝日連峰、祝瓶山のカクナラ沢と、飯豊連峰の胎内川こそメインイベントのはずだった。しかし、後で聞いてみれば共に難儀な沢で、カクナラ沢ではゴルジュ内に凝縮された滝の連続に行く手を阻まれ、胎内川~本源沢では全て露出した滝壺の激流に翻弄されらしく、話を聞くと私などは正直な所「行かなくて良かった」と安堵している次第。今更5級の沢などを勢いで登れる程甘くはない。
障子岳 中間リッジ~第2スラブ
祝瓶山 コカクナラ沢
しかし32年ぶり障子岳東面スラブを訪れる事が出来、思い出深い実にご機嫌な日々でもあった。障子岳東面スラブは最近は殆どトレースされていない様だが、10月の雪渓のない時期、大井沢川を遡行してからの完登となるとボリュームも有り、日帰り山行としては充実感に満ちている。もっとも、6月頃なら雪渓を詰めてもっと楽に取り付けるが、場合によっては中間リッジをブッシュを支点に取りながら懸垂で下り、スラブ群だけ快適に攀じるというのも良いかも知れない。50mロープなら6~7回位で取り付き点に達するだろう。
また、記録が見られない祝瓶山南面のコカクナラ沢をトレースしたが、考えてみれば未知のコースの遡行程贅沢な沢登りもないと言える。祝瓶山の沢といえば南面の金目沢・西面の角楢下ノ沢がメジャーだが、ヌルミ沢・コカクナラ沢・カクナラ沢も決して負けてはいない。標高こそ低いが東面は山頂から鋭く切れ落ち、豪雪の朝日連峰を物語るような、深いゴルジュと磨かれた美しいスラブで構成されている。コースはピラミダルな山頂に突き上げる独特な雰囲気で、小粒だが朝日の沢の要素が凝縮されており、登攀系を好む沢屋さんには是非お勧めしたい沢だ。
飯豊、朝日連峰の沢には首都圏から沢のエキスパートが訪れるが、残念ながら地元の沢屋さんを見かける事はまずない。自分たちのような中年沢屋も普通じゃないが、沢王国の山形県で沢登り人口が少ないのはやはり寂しい。
※カクナラ沢は10年前にわらじの会が遡行記録(西の沢)を発表しており、長井山岳会の方も2003年に遡行しているようです。