芋煮会のシーズンも終盤になりそうな時期だが、最近久しぶりに山で芋煮を作って一杯やってみた。勿論山形育ちの自分は山形スタイル。
高校生の頃でかなり昔の話だが、学校での重要な行事がマラソン大会の後に行われる芋煮会だった。長井の学校のマラソン大会は朝日連峰の祝瓶山に通じる林道途中の管野ダムを折り返すコースで、辛いジャリ道の急な坂道のコースは高校生にとって試練でもあった。3年の時には男子370名中13位だったのがこの頃唯一の自慢話で、終了後は3年生全員の恒例行事である河原での芋煮会が行われた。これがまたすきっ腹にはたまらない至福の時で、この時期に山形芋煮会の文化が自然と深く心に刻まれる。
場所は渓谷の管野ダムから平野部に注ぎ込む発電所のある広い河原で、上流には人家が皆無の為、そのまま飲める様な清流の野川の水を使い、秋の高い青空の下で食する芋には実に旨かった。今はそのダムをすっかり埋没させる巨大な長井ダムが建設半ばで、今はトンネルと付け替え道路・高架橋でコンクリート漬けの世界となり、美しい渓と清流の面影はすっかり失われた。
普段仙台にいると芋煮などは作らないが、仙台流の芋煮は余り興味が無いので今回は三国小屋に食材を持ち込んだ。
【作り方】
材料は里芋、蒟蒻、長ネギ、牛肉、砂糖、日本酒のみ。最近はマイタケなどの茸などは許されるが、味の良くなるごぼうだが汁が濁るのでご法度とされる。牛肉は脂身の多いバラ肉の方が味が良く、蒟蒻は味が良くなじむ様に手で千切って鍋に放り込む。
ここで大切な事は牛肉と蒟蒻を一緒に煮込まない事で、最初に砂糖、醤油、日本酒で味付けした後肉を軽く煮込み、煮込んだ肉は別の皿にとって置く。これを怠ると蒟蒻から出る石灰質で肉が硬くなってしまう。
肉を引き上げた鍋の中に里芋・蒟蒻を放り込み、芋に箸が通る位になるまで丹念にアクを取り続ける。芋が柔らかくなった頃に取り置いた牛肉を入れ、大きめに切った長ネギを入れ、後は一回グラッときたら出来上がり。残った汁にはうどんの玉を放り込み、翌朝には贅沢な朝食になる。
この作り方は同じ山形でも村山風で、同じ醤油味の置賜風・最上風、味噌味&豚肉の庄内風とは異なっている。いずれもシンプルこそが真髄で、余計な素材でごちゃ混ぜにしたり、麺つゆ等をを使ったりしても即刻退場処分となる。
また、スーパーで売っている皮を剥いた袋詰めの里芋は表面が硬く、地物独特のモチモチした食感が無くて今一つで、また独特のヌメリを取らない方が自分では好みです。なお、日本酒は3人分で100~150ml位は入れますが、余りにも安い酒を入れると変な癖が残って良くない様です(反省)。