新・本と映像の森 140 大島真寿美さん『ピエタ』ポプラ社、2011年、<再録20110223>
「2011年02月23日 10時45分34秒 |
本と映像の森 139 大島真寿美さん『ピエタ』ポプラ社、2011年2月18日、337ページ、定価1500円+消費税
「さよなら、ドビュッシー」「シューマンの指」と書いてきた「音楽小説」の感想の第3番目です。
「ピエタ」はイタリア語で「慈悲・哀れみ」を意味するPietaという言葉です。これが転用されて、キリストがはりつけにされ死んだ時に、息子の遺体をかき抱く母マリアの像も意味するようになりました。
ぼくもミケランジェロさんのあの哀しみに満ちたピエタ増は大好きです。
この本は18世紀のイタリアの交易都市ヴェネチアとその孤児院「ピエタ」を舞台にしています。
この孤児院で、主に孤児の少女たちによる「合唱・合奏」隊を指揮し、彼女たちのために作曲していたアントニオ・ヴィヴァルディさんがウィーンで死んだ知らせから物語は始まります。
孤児のエミーリアは、成人してからも「ピエタ」で事務長のような立場で働いています。
同じ孤児で合唱指揮をしているアンナ・マリーアや、裕福な貴族の娘で同じ世代で「ピエタ」に音楽を習いにきていたヴェロニカ、その3人を中心に、エミーリアがヴェロニカの失われた楽譜を探索しながら、自らやみんなの青春をさまよう<探索>の物語です。
全編で、ヴィヴァルディさんのヴァイオリン協奏曲「調和の霊感」L'estro Armonicoが、鳴っているのが聞こえます。
「ヴァイオリンの舟が光ってる
ここにいるよと光ってる
たましいの光
うつくしい光」
「空は遙か
光りは遙か
むすめたち、よりよく生きよ」
「よりよく生きよ」
おすすめです。
ヴィヴァルディさんは、生涯で協奏曲を500曲以上、オペラを現在残っているだけで52、ソナタを73曲、とたくさん作曲しています。
バッハさんとは違う明るさ、空の青さ、太陽のまぶしさ、鳥たちの素敵なさえずり…が魅力です。
できたら全部聞いてから死にたいな。
無理ですか…。」