棋士の高尾紳路天元(38)のブログ「たかお日記」で藤沢名誉棋聖の六年祭のことを知った。仏教では七回忌である。25日の10時から台東区の小野照崎神社で行われるという。喪服でなく平服でいらしてください、お祭りとは祝詞(のりと)をあげていただくことですとある。サッカー日本代表の武藤嘉紀選手が座右の銘は「強烈な努力」と語ったことからこの言葉がひろく知られるようになった。
武藤選手の座右の銘のことを私は「たかお日記」で知った。六年祭はその「強烈な努力」と刻まれた藤沢秀行記念碑前で行われる。地下鉄日比谷線の入谷駅で降りるとすぐのところに小野照崎神社はあった。私が開始時刻30分前に到着すると、鳥居の辺りで中から通りをうかがう風情の笑顔の女性がいる。しばらくしてこの女性が高尾夫人であると分った。台風の影響で雲は多いが雨はなく涼しい一日だった。
高尾ご夫妻は早めに来て神社側と打ち合わせをし、いろいろと準備されていたのだと思う。境内にはすでに吉田美香女流棋士の姿があり、関係者と談笑していた。準備が整いそしてことが始まるまでに、ほんのわずかだが手持ちぶさたな時間が生じることがある。そんな絶好の機会をいかすべく私は高尾氏に「たかお日記」の読者であると名乗り出て、厚かましくもツーショットをお願いした。高尾氏は近くにいた年輩のプロのカメラマンに私のデジカメを渡して私の横に並んだ。
私がツーショットと考えていたのは高尾ご夫妻のツーショットだった。ささやかな互いの思い違いだったが、あらためて高尾氏は夫婦で祭壇の前に立ち私の希望を叶えてくれた。また記念碑の横の地面に円形のプレートがある。先ほどのカメラマン氏は私がそれに気付いてないことを見てとると、その存在をそっと教えてくれた。まもなくプロの棋士たちが続々と到着した。棋士の周りをその他の参列者が囲んで並び、祝詞奏上のあと全員で献杯を行った。大竹秀雄名誉碁聖の言葉、高尾天元のあいさつが簡潔に述べられて30分ほどで終了した。いい六年祭だった。