親鸞アニメ全六巻を見終えて、「記録的猛暑となりましたがいかがお過ごしでしょうか。気候一つ思うようにならぬ世の中ですが、大悲の願船に乗せて頂くと光明の広海に浮かびます。歎異抄講座は次の予定です」という葉書が届くようになった。講座参加もいいが、親鸞に関する本をひとり静かに読んでみたい気持ちの方が強い。
毎日新聞に連載中だった高村薫「我らが少女A」が7月で終了したことを知って最後の10回分ぐらいを隣町の図書館で読むことにした。過去と現在が交錯し、土地と人間が溶け合う中で、SNSをたぐる若者を描いて現代を浮かび上がらせようと試みた連載だった。作者と関係なく「我らが少女Aを歩く」という催しまであったと聞く。
目的をはたして帰ろうとした時、ふと目にした本に思いがけず手が伸びた。1983年に鹿児島県出水市の西照寺で2日にわたり開催された講演会の記録「親鸞・不知火よりのことづて」である。講座は西照寺開基百周年を記念して行われた。吉本隆明、桶谷秀昭、石牟礼道子の三者が講演している。35年以上前のことである。住職が前文を、仕掛け人の詩人が後文を書いていた。
それぞれの講演内容については、繰り返し読んでこれから煮詰めていこうと思う。そんな意欲が生まれる本だ。鹿児島は島津藩時代、三百余年間念仏禁制の地であり、過酷な宗教弾圧が行われていたことを知った。出水市の隣の水俣市の源光寺には薩摩から密出国した一向宗門徒が身を隠した「薩摩部屋」というのが残されているという。