これまでで何回も同じ本を買ったのはそう多くないが、この本だけはなくなると思い出すたびに買って手元におき、読んでいた。
失くしてしまうのは知人に貸したり、あげたりしてしまうことが度々だったからだ。
[菜根譚(サイコンタン)]は中国の古典の部類だが日本には江戸時代に入ってきた書物で360程の短い文章の中に人生をどう生きるのかという生き方が書かれている。
儒教(孔子、孟子の教え)と道教(老子、荘子の教え)と仏教という三つの教えを融合し、世の中をどう生きていったらよいかと説いている。
書かれたのは400年ほど前で作者は洪自誠という人だ。
中にこの様な文章がある。「遇病而後思強之為宝、処乱而後思平之為福、非蚤智也。・・・】漢文は殆ど読めないが訳文が載っていて
「病に遇いて後に強の宝たるを思い、乱に処して後に平の福たるを思う。蚤智に非ざるなり。・・・」これでもまだ判り難い、そこで
冒頭には「病気になってから健康のありがたさに気づき、戦乱の世になってから泰平の世のありがたさがわかる。これでは先見の明があるとは言えない。
幸福を願いながらも、それが不幸のもとになることを見抜き、生を願いながらも、それが死に通じる道であることを承知」している。これこそ
知者と言うべきではないか。」
後ろにまだ著者の意見も載っている。人生をたくましくいきていくためには、ふかい読みのできる能力を磨く必要がある。
そのためにはどうすればよいのか。①古典や歴史に学んで人間社会の理を理解する。②人生の現場で苦労しながら人間としての経験を積む。この二つを心がけたい。
このようにとても判りやすく人生について、幸福について、人間について、世間について、などなどが書かれてあって読むたびに自分を振り返ってみる材料のひとつとなっている。