「化粧の下の涙」
目元に君は 哀しみを滲ませて
さっきまで 泣いていたのだろう
頬に涙の青い跡を残して
無理に笑おうとする
頬がぎこちない
真っ赤な口紅は
傷口のように痛々しく見える
しょんぼりと下を向いた耳に
イヤリングは冷たい雨粒のようだ
鼓膜を打ち続ける憂鬱な雨音
君の死を願う拍手のようだ
ヒクヒクと震える
湿った犬のような鼻は
苦しみの匂いをかぎ分ける
何度も鼻をもごうとしたのだろう
寒空に真っ赤に腫れるようだ
君の何ものも見ない
無数の視線にさらされて
君は怯えて言葉を飲みこむ
だから必死に身振り手振りで
訴えかける
みんな遠くに去っておくれ
自分一人にしてくれと
震える指先 汗ばむ足は
不器用なほどに力が入り
筋肉が強張ってしまう
夜空は残酷な沈黙を続け
星は自分の夢だけに一杯だ
笑顔の人の心の闇に
どんな黒い思惑が蠢めくのか
とてつもなく気持ちの悪い
胸に秘めたる鋭利な刃
化粧に隠れた君は
笑っているのに泣いて見える
素直に泣けずに引きつって笑う
心もすっかりとくしゃくしゃに皺深く
君の声を聞いたのはいつだろう
その立ち振る舞いは辛くなる
君の側から静かに離れる
まるで自分を見るようだったから