風のささやき 俳句のblog

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朝日の昇る頃に 【詩】

2020年05月07日 | 
「朝日の昇る頃に」

暗く凍りついた水面に触手を拡げ
朝焼けの赤い陽射しが闇をほぐして行く
存在を忘れられていた波が
深い眠りから目を覚まして船底を揺らす

古びたレンガの壁と壁の合間から
差し込んでくる朝日には船の先も濡れ
人々が目を細めるそれは
押し寄せる今日の出来事への期待

僕はただ明るみ行く様を
言葉無く見上げたまま
僕の五感が感じ取れる以上のものを
感じていようと無防備に心を開け放つ
   
僕の中の深いところで沸き立つ印象
その確かにあるはずの微かなものを
表す言葉を持たずに僕は
肌に過ぎて行く潮風をただ頬に
変わり行く空の色に見入っている

僕の言葉はまだ赤子の拙い言葉から
一歩も踏みだしてはいないのだと思う
僕にはもっとたくさんの経験と印象と
それらを書き連ねようとする言葉の数が必要だ
それでも言葉は拙いままでいるかも知れないが

何処に隠れていたのだろうか
一群れの鳩が空に飛び立って行く
その突然の羽ばたきの音に静寂を消され驚きながら

いつしか僕の言葉も自由になって
すべての物事の上を軽く羽ばたき
例えば今日の朝焼けの色合いを
心なぞるがままに
歌うことができればいいと