風のささやき 俳句のblog

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雨上がりの街 【詩】

2022年05月05日 | 

「雨上がりの街」

君たちの小さな瞳には
あの空を横切る虹が
どんな不思議な色に
映っているのだろう

雨上がりの明るむ街並
通り雨に濡れ 声をあげながら
走り込んだ家の軒先
まだ乾かない髪を 気にすることもなく
愉快なほどに 目をまるめる
君たちのために もう少し
ここにいて 天がける
きれいな彩りを 眺めていよう

世界中にあふれる
美しいもののかけら 
たとえば今日の虹 夕焼けの金色
青い空を支える新緑 走る雲の速さ
鳥のさえずり 天道虫の背中の星も
川の楽しげなささやき 花の一心さも
(そうして君たちにも 
 気がついて欲しい
 人の心にひそむたくさんの 
 はかなくて 美しい思いを)

君たちは一杯 一杯集めるがいい
君たちが大事に集める
絵本や玩具よりもたくさんの数の
美しい風景 言葉や音楽 色彩や不思議な形象で
君たちの小さな胸を 彩り満たせばいい

それは長い影を背負う
寂しい夕べにも道標のように
君たちを正しいところへ
運んでいってくれるだろう
(君たちの心に
 忍び込ませる僕からの手紙
 そのときにはもう
 僕は君たちの大きな力には
 なれないだろうから)

僕が君たちにできることは
あまりにも少ないから
せめてこの一時
虹に見とれる君たちを
静かに見守っていよう
それから虹が消えたら家へ帰って
温かなお湯に頭までつかろう
家までの短い距離を競争しながら

(そうして君たちは知っているかい
 君たちの無邪気な笑顔が
 僕の中の一番楽しい風景となって
 若葉のようにキラキラと
 まぶしいぐらいなんだと)


憩い 【詩】

2022年05月05日 | 

「憩い」

穏やかな日曜の午後
少し遅い時間
あなたと歩く春の公園は
若葉の柔らかな緑に色づいて

梢を眺めながら歩く
つないだ手は温かだった
心の温もりが そのままに
手のひらから伝わった

暖かな風も吹く
雪柳の白い花も揺れる
ベンチに誘われるように座り
眺める池の水面には
銀色のさざ波がたっている

目を細め 眺めている
太陽の精緻な筆使い
心地よい 疲れを
いつしか感じて
その眩しさと 自分の境目とが
あやふやになる 僕が
身をゆだねたのは まどろみだった

いつもの 物憂い
街の音も 人の声も
夢よりも淡く
遥かかなたで鳴る
遠い世界の出来事だった

子供が二人 戯れる声に
息を吸い込み 吐き出して
目を覚ましたときに
傍らには あなたの
静かな 笑顔があって

うれしくて あなたの肩に
もたれたまま見る 風景は
生まれたての 子供の目に映る
眩しいばかりの 世界だった

水鳥がゆっくりと
銀色の水面に 水脈をひく
その後を 目で追っていた