1970年9月、ショーはJ・ヘンダーソンのグループの一員として、カルフォルニアのハーモサ・ビーチにある「The Lighthouse Cafe」で演奏し、ライブ・レコーディング(JOE HENDERSON QUINTET at The Lighthouse(Milestone 9028)を残している。その時、偶々ライブを聴きに来ていたコンテンポラリー・レコードのレスター・ケーニッヒの息子、ジョンと言葉を交わす機会が有り、ショーがまだ、リーダー作に恵まれていないことを知ったジョンは父親に進言し、その年の12月に録音が実現した。
「遅すぎる」を証明するかのようにショーの公式初リーダー作は、翌71年に異例の二枚組みで発表された。意外にもロサンゼルスのコンテンポラリー・レコードのスタジオではなく、録音はNYで行われている。最新の空気を取り入れたかったのか、メンバーの調整からだろうか。
曲によってケイブルスはエレクトリック・ピアノを弾き、当時のトレンドを取り入れているものの、6曲中2曲がLPの片面全部を占め、しかも全曲、ショーとケイブルスのオリジナルで構成された至ってハードでコアな力作と言っていいだろう。しかしながら、作風が真面目過ぎたのか、時代が悪すぎたのか、当時、殆ど話題にも上らず、そのまま時代の変遷に埋もれてしまった感がある。
ただ、生存中はもとより死後の今なお「不当評価」に甘んじているショーの真摯なジャズ・スピリットは既にこの初リーダー作で全開している。時折、描いているイメージにテクニックが追い付いていない一本調子な部分が散見されるものの、荒削りながら溢れ出る「覇気」が全てをかき消している。今の時代、これほどの「覇気」を感ずる初リーダー作は出てくるだろうか。
そうなれば、二作目、”SONG OF SONGS”はある意味で期待の度が大きくなるというもの。こちらはロサンゼルスのコンテンポラリー・レコードのスタジオで録音されている。だが、この小難しい表情が示すように理屈ぽい演奏に? 少し前、ジャズ・メッセンジャーズで吹き込んだ‘CHILD’S DANCE’の”C.C.”で聴かせる目の覚めるようなプレイは何処へいってしまったのだろう。
全4曲、すべてショーのオリジナルで占められ、その意欲は解らないワケではない。ここでも、エレピが入った曲があり時代性を反映しているものの、全体に60年代半ばのBNの新主流派、しかも、フリー、アヴァンギャルド寄りの匂いが残っていて、時代に抗う部分が気になります。ただ、50年の時を経て改めて聴き直すと頑なに自己のスタイルを徹そうとする姿勢に一種の清々しさを覚える。
ある廃盤レコード屋(Net)で結構な値段を付けていた。当時、世間、市場から無視された分、RAREなんでしょう。