ゲッツをよく聴き込んでいるファンならともかく、世間一般では「ハード」と対極的なイメージが強い。しかし、ゲッツは生粋のハード・バッパー、しかもハード・ヒッター。
それを自ら証明したレコードがコレ。
録音されたのは1975年10月1日ですが、世はフュージョン時代、あまりの「正攻法」にさすがのCBSも腰を引いたのか、ゲッツ自身(プロデュース)が「時期を見計らって」と考えたのか定かでありませんが、リリースされたのは8年後の1983年。
一曲目の‘Summer Night’、A・デイリーのpとルバート・イントロの後、テンポを上げながらゲッツがメロディアスに本性をむき出していく。でも、クライマックスはまだ先に残している。
B面の‘Lover Man’、間違いなくこの曲のベスト・ヴァージョン(インスト)の一つ。彼のアドリブを注意深く聴くと意外に発展性は少なめで、キーとなるフレーズを多用しながらも単調にならないよう実に丁寧に繋ぎ「汲めど尽きぬ鮮やかなアドリブ」に変身させている。そこが天才たる所以でしょう。
続く‘Invitation’、窓を全開にして、ボリュームをMAXして聴きたい衝動に駆られる。たとえ、隣近所から怒鳴られても。J・ヘンダーソンの名演が人気です(好きです)が、自分ではこのゲッツが東の正横綱です。白ければ、クールなんて幻想です。
このスタンダード3曲、同曲の屈指の名演揃いですが、注目すべき曲が‘Summer Night’に続くA-2、オレゴンのメンバー、ラルフ・ターナーの‘Raven's Wood’。こうした新しい感性をもつ曲でさえ、自分の語法で圧倒的に吹き切るゲッツ、迸る熱気に茫然自失。
また、全4曲に亘り、A・デイリーのモード・ピアノが素晴らしい。特に‘Lover Man’のエンディングに掛けてのソロ・ピアノ、うぅ~ん信じ難いです。そのままデイリーにフィニッシュさせる辺り、ゲッツはピアニストの活かし方が上手いですね。
こんな凄いレコードなのにほんどの人が知らない。ま、それはそれで、良いんですけど。ゲッツに求める味が別に有っても不思議ではないので。
自分の記憶では日本でのリリースはこの時1回だけで、米国盤はカヴァがあまりにも酷く、それだけで無視されたのでしょう。完全に「お蔵入り」音源扱いですね。
久し振りにこの一枚、‘VOYAGE’を、
かれこれ30年近く前、新しいレコード・ショップが開店したニュースを聞き、行ってみた。たいした獲物はなく帰ろうとした時、何気なく壁面をみると「エアメール新着輸入盤」と書かれた小さなPOPが付いたこのレコードが目に。
「BLACK HAWK」、聞いた事が無いレーベルでしたが、手ぶらで店を出るのも何だしなぁ~と。
しかし、とんでもない代物でした。
ふくよかなサウンドの中、ゲッツの知的でクールを装うインプロヴィゼーションの根底に流れるエモーションの深さはまるで底なし沼。彼の全キャリアを凝縮したと言っても過言ではない「問答無用」の傑作ですね。
アルバム・タイトルになるラストを飾るバロンのオリジナル‘Voyage’、疾走感と高揚感に溢れた会心の一曲!敢えてラフに吹き込むゲッツのtsと鍵盤の上を跳ね回る飛魚のようなバロンのpがこの上ない快感を呼ぶ。
初めて聴いた時の感動を思い出すようにシールド・フィルムを剥がさずそのままにしてある。盤はいまだ湾曲していない。
‘THE MASTER’と‘VOYAGE’で味をしめ、ゲッツのレコードを集めた時期があり、その内の一枚。
一時住んでいたデンマークでの未発表ライブ音源。会場により録音状態にバラツキがあり、やや一般向きではありませんが、一曲だけ5分33秒「息を呑む名演」が隠されている。
‘I Remember Clifford’ ・・・・・・・・・・
ゲッツとC・ブラウンの関係は知りませんが、ブラウンとこの曲に対するリスペクトの念がこれほどまでに秘められた演奏を他に聴いたことがありません。
誰もが知っている曲、メロディ・・・・・・・・・・
だが、今まで経験したことがない「胸が詰まるほどの切なさ」が湧き上がる。