boston acousticsで聴いた今日の一枚
no room for squares / hank mobley (BLUE NOTE) * 1963
マイルス・グループに在団中、モブレーがBNに吹き込んだ隠れた好盤。マイルスにチクられてムカついたのか、珍しくドスを効かしている。
このタイトルはカヴァの輪が意味してるように「固い奴はお断り」と訳されていますが、固い奴とは、一体、誰だろう?マイルスを揶揄していると思っても不思議ではない。
さて、この作品はそうした裏事情を抜きにしても、聴き所は多い。まず、クスリにやられ、約2年ほどジャズの表舞台から遠ざかっていたモーガンのカムバック後、初の録音と、A・ライオンが惚れ込だヒル(p)のBNデビュー、2度目のセッション。このヒルのプレイ、イイですよー。
本作にはもう一つのセッションがカップリングされていて、ややとうが立ち始めた感が否めないバード(tp)と若手有望株と注目を浴び始めたハンコック(p)が参加している。
で、本作は、曲によって唸り声を上げるアグレッシヴなモブレーが聴きものですが、ここでは、tpのモーガンに話を絞ってみましょう。
ジャズ本やWEB上でモーガンについて「鯔背(いなせ)な」とか「ヤクザな」とよく表現されていて、鯔背(いなせ)とは、粋っていうこと。モーガンがジャズ・シーンで日の当たる場所を歩んでいたのは、50年代後半から60年代の初めとわりと短い期間で、カムバック後はあの「サイドワインダー」でヒットしてからは徐々に時代から取り残されていった。
僕には、過保護に育てられた天才が、ヤクに溺れ、零落れていく姿とダブっている。
今でも「モーガン、モーガン」というファンが多いのは恐らくその姿に何かしら共感を覚えるのだろう。幸せ者である。
ただ、鯔背はともかく、ヤクザな、って表現は如何なものだろう。
よくモーガンの代表作、名盤として「CANDY」が挙げられるけれど、鯔背でもヤクザでもなく、妙に大人びた優等生の姿しか聴き取れないのではないか。カヴァからして、甘口ですよね。
そこで、本作のモーガンはどうだろう。
バラード‘Carolyn’とアップ・テンポの‘No Room For Squares’。
耳元で囁くようなすけこまし・ペットと肩で風を切るチンピラ・ペットを聴け!
このモーガンを聴かずして、「ヤクザな」と言うなかれ。