jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

難解な ・・・・・ THE STANDARD / SONNY ROLLINS

2020-02-28 | ジャズ・ts

 

難解、と言っても、内容がフリー、アヴァンギャルドとか政治色、或いは主義、主張の発信等々の意味ではなく、作品自体の成立ちの話なので自分だけが感ずるものかもしれない。

ムード・テナーを連想させるカヴァとポップ系を含んだスタンダード10曲となれば、いくらロリンズと雖も大方の予想は立ちます。でも、裏はそう単純ではない。

本アルバムは高ギャラの代りに2年間に6作を録音するというRCAとのハード・スケジュールな契約の最終作で、それまでのセールス上の経緯から穿った見方をすれば「一発逆転狙い」、反対に「消化作」の側面を感じないわけではないけれど、それはそれで良しという聴き方が有っても不思議ではありません。

前5作はそれぞれ妙味があり、好きな作品群ですが、本作だけは、ずっと腑に落ちないまま過ごしてきたのでそろそろ決着を。

フランスのRCAからリリースされたCD(↑)には後に「アフター・ ザ・ ブリッジ」の中で日の目を見た未収録3曲がプラスされ全13曲になっている。この仏盤CDには腑に落ちなかった点を朧気ながら解き明かす手掛かりがある。

1964年6~7月に掛け6日間も収録日に当て、TAKE数も少なくとも49(実際は恐らく100以上?)、そしてテイクを繋ぎ合わせた編集等のデータがクレジットされている。

録音はRCA自社のスタジオなので許されるけれど(笑)、最終的に1曲しか収録していない日が2日もある。しかも、内1曲”I’ll Be Seeing You”の演奏時間は1:36!

最多のTAKE数は”Long Ago”(2:47)の10。繋ぎ合わせテープ編集はオリジナルで1曲、未発表で2曲です。

また、曲数を増やす、と言う上層部の指示?方針?に反し”Trav'lin' Light”の未発表ヴァージョンは12:44まで伸ばし、オリジナルは半分以下の4:06でフェード・アウトさせている。

サイドのソロは最小限に抑えられ、ハンコック(p)にしてみれば「オレは何のために呼ばれたのだろう?」と思ったに違いない。

不可解を通り越し、もう頭がくらくらしますね(笑)。サイド・メンもさぞ疲れたでしょう。

 

 

ロリンズとプロデューサー、G・アヴァキャンは、「実を捨てて名を取る」作戦に最大級の精力を注いだと言っていいのではないか。陳腐とも思えるカヴァは計算ずくで、まるで神謀のようだ。

やっと、自分なりに腑に落ちた。


PICKERING 625E2 & SUGAN / PHIL WOODS

2020-02-22 | お遊びオーディオ

 

30年ほど前、秋葉原のオーディオ・ショップの年末セールで、半額で購入したもの。開けてみるとカンチレバーが右に一本分寄っていた。取り敢えず数回聴いたが、気になり箱に戻しそのままに。

先日、物は試しとブラシの状態から使用頻度が少ない代替交換針(国産)を手に入れた。純正はゴールドですが、シルバーです。チップもほぼ新品同様でした。

 

 

改めて見直すと、当時、一本分と思っていた片寄りは半分ほどで、ま、支障はないと判断し、聴くと、セールス・ポイント通り、明るく、ちょっと出過ぎな位、音が前にポンポン出てくる。シェルをアルミからマグネシウム合金に替え、上手く抑え込むことができた。代替交換針に差し替えると、乾燥気味な音にwetさが加わりいい塩梅に。スペックの出力電圧は4.4㎷ですが、聴覚上、6~7㎷ほどに聴こえる。兎に角、元気ですね。

ふと、国内盤に適しているのでは、と脳裏をかすめ、この一枚を。

音にやや厚みがなく、音圧も低めの再発モノ盤です。上々の結果が出ましたが、念のためA・テクニカのモノ再生カートリッジ(MC)で聴き比べると、やはりモノ・カートの方が優れている。625E2は国内ステレオ盤でキャラとメリットをより発揮するでしょう。

 

 

ライナー・ノーツの語り口がどことなく違うので、名を見るとジャズ喫茶「イントロ」のマスターでした。回想から始まり、この吹き込みが当初、16回転LPとしてリリースされた経緯~50年代の作品群~68年のERMでの劇的カンバック~81年DB誌国際批評家投票で1位まで実に丁寧にWOODSを追跡している。名ばかりの評論家が書くワン・パターンのライナーノーツより、よっぽど良心的で充実している。

1957年7月19日に録音された本作は、パーカー作3曲、ウッズのオリジナル3曲で構成されている。どれもウッズは絶好調でパーカー派の番頭ぶりを遺憾なく発揮しているけれど、特にオリジナル曲では、最早、パーカー派だけでは括れないアイデンティティが確立されている点を聴き逃すわけにはいかない。中でも、B-2の”Green Pines”での低域を多用して歌い上げるasは57年とはとても思えぬほど新鮮で、こんな風にasを吹ける人は今でも他にいないでしょう。その後、長い不遇のトンネルに入るものの、ERMでの復活が決して奇跡ではないことをこの演奏が裏付けている。以前、B・カーター楽団の幕張での演奏会でゲストとして呼ばれたウッズをカーターは「マイ アイドル」と紹介している。粋なことを言うなぁ、と感心したけれど、ジョークでなくカーターの「本音」なのだろう。ウッズも惚れ惚れする名ソロで応えたのは言うまでもありません。

ただ、アルバムを通し共演のR・コープランド(tp)の力量不足が誠に惜しい!

もし、tp抜きのカルテットで全曲ウッズのオリジナルで構成していたら、ペッパーの「ミーツ」に充分、勝負できたのではないか。


悩ましくも楽しい ・・・・・ CD再生

2020-02-16 | お遊びオーディオ

 

20年以上使っているCDプレイヤー・VRDS25X(ティアック)の調子がまた悪くなり、買い替えか、それとも、いっそのことCDを聴くのは止めようかとも考えたが、知人から修理屋さんを紹介してもらい直ってきました。幸運にもこの機種を熟知されており、三度目の入院も僅か二日間、しかも修理代は想定の半額以下で済みました。

早速、音出しを、前と同じ良い音が出てきて、一安心です。

そうなると、もっと良い音に、なんて欲が出てくる。CDプレイヤーの音質向上はアナログの様にカートリッジ周辺の見直し等と違い、選択肢が限られている。一番簡単なのが電源コード部分で、丁度、ネットでAETの電源プラグを見つけた。結構古く本体は松下電工(現在パナソニック)のホスピタル・グレードものにクライオ処理したモデル。新品同様で格安なのでGet.。

今、使用しているプラグも年季が入ったフルテックなので、ちょっとお遊びモードですね。

コードは癖が無く素直なSAECの6Nタイプ(これも古いです)。こんな感じです。

 

 

壁コン(パワー・ポート)からダイレクトではなく、一旦、このコードで電源タップ(クライオ処理コンセント)に落とし、PSオーディオのエントリー・クラスの電源コードを通してVRDS25Xへ。

 

 

ハイ・スピードと言うのでしょうか、躍動感あるいい音が飛び出してきました。別に所有しているクライオ処理のHUBBELLとはやや異なり、AETの方がメリハリが利いている。多分、処理の仕方(時間等々)が違うのでしょう。

高域が伸び、音の輪郭もUPしている。「シメシメ、大正解、大正解」と喜んでいましたが、何枚か聴くにつれ耳当りの強さが気になり始めた。

翌日、新旧プラグの対比ヒアリングを。

上段左から1曲ずつ”Where Are You?”、”Lover Man”、下段左から“When You Wish Upon a Star”、”Autumn Leaves”、”His Master’s Voice”の5曲を選んだ。レコードとダブっているけどCDは居眠りしても大丈夫な所がメリットですね。

 

 

意外にも3対1(イーブン・一つ)で旧・フルテックに軍配が上がりました。AETはマッチョで付帯音が少なく、フルテックはフォーカスが緩いけれど、音の響きが今の自分の好みに合っている。AETは出番が来るまで暫く休憩です。素質は良いですから。

なお、下の赤いTUNAMI GPXは別系統のパワー・アンプに繋いでいます。

 

 

ブレード、ねじ止め部分をクリーニングと接点復活剤でメンテすると更に音が良くなりました? プラシーボですね。ついでにカヴァ・プレートもアルミからステンレスに取り替えました。

 

気分を良くして、ちょっとややこしい1960年9月1日の音源を一つに纏めたCDを。

タイトル曲でのB・ミッチェル(tp)、街角の名もなき歌い手の心の内を映し出した畢生の名ソロにほろり。

 

 

中ジョッキー二杯分でこれだけ楽しめたら、言う事なしです。


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (11) ・・・・・ CONTOURS / SAM RIVERS

2020-02-09 | Legacy of Freddie Hubbard

 

インテリジェンスとパッションが一分の隙なく敷き詰められたクールな傑作。

リヴァースのマイルス・グループの在団期間は短く、確かにショーターへの繋ぎ役だったけれど、心無い人達から「首を切られた」との風評を流され、しかもフリー、アヴァンギャルド寄りのスタイルを身上とし、70年代後半もロフト系の分野で活動を続けたため一部のファンを除き熱心に聴かれていない。

ただ、見方を変えればマイルス・グループに抜擢されたお蔭で無名の存在から一躍表舞台に上り、BNにリーダー作を録音できた事実からすれば、ラッキーと言えるのではないか。

BNの2作目、当時の「新主流派」精鋭達とのガチンコ勝負と思いきや、彼らの瑞々しい感性に交じって、リヴァースはtsの他ss、flを曲によって持ち替え、色彩感を添え驚くほど高い次元で柔軟なパフォーマンスを聴かせる。

リヴァースの暴れん坊ぶり(笑)を制御できたのは、ハバードとハンコックの存在だろう。

特にハバードの卓越したスキルと曲想、曲調に合わせた見事なコントロール(1曲は珍しいミュート)は最早、神技と言っていいだろう。刺激を受けたハンコックもテンション漲る凛としたプレイで応える。

聴き方によっては3人のうち誰がリーダーといってもおかしくないほどのチームワークの良さとその創造性は、ジャズへの真摯な思いを伝えている。

なお、リヴァースをマイルスに推挙したトニーは都合がつかず、代役に入ったチェンバースも役割を充分果たしている。

録音は1965年5月21日。RVGの録音もGoo。

 

BNの作品群の中で、最大にして最高の「隠れ名盤」。


BLUE NOTE 後期の3作 ANDREW HILL

2020-02-02 | ジャズ・p

 

ヒルのBNでの活動期間を大別すると、初リーダー作”BLACK FIRE”(1963年)~S・リバースを加えたクインテット(1966年、後年リリース)を前期、BNがリバティに吸収、傘下に入った68~70年代初めを後期と分けられ、プロデュースがライオンからウルフに移っている。

色々と語られる前期作に比べ、後期の作品について触れられるケースはそれほど多くない。ヒルの一般的人気はその個性からしてか、それほど高くなく、語弊が有るやもしれないが、寧ろ研究材料の対象として存在価値が高いかもしれない。

左から録音順で”GRASS ROOTS”(1968.8.5)、”DANCE WITH DEATH”(1968.10.11)、”LIFT EVERY VOICE”(1969.5.16)

約2年間のブランクを置いた”GRASS ROOTS”

意表を突きフロントの2管にモーガン(tp)、アービン(ts)を据える「奇策」に出た。「堅物」のイメージを払拭する狙いがカヴァと共に良く表われている。今までの眉間に皺を寄せて聴くヒルの姿はなく、これはこれで良いと思うけれど、サイドワインダー擬きのB-1の”Soul Special”は、今更、これは無いんじゃないかと思う。この曲のためにモーガンを呼んだのか、と勘繰りたくなります。全体を通し、アービンの小気味好いプレイが思いの外、効き、このセッションの役割を彼は充分に理解している。

僅か二ヶ月後に吹き込まれた”DANCE WITH DEATH”、今度はバリバリの新鋭、トリヴァー(tp)とファレル(ts、ss)をフロントに配した「新主流派」スタイル。録音のチャンスを生かそうとする二人の熱気に満ちた積極的なソロと以前よりスムーズに流れるヒルのプレイが心地よいテンションを生み出した好作。

でも、ちょいコンサバな”GRASS ROOTS”と180°異なる”DANCE WITH DEATH”をリアルタイムでリリースするのは悩む所ですね。結局、”DANCE WITH DEATH”は「お蔵入り」の憂き目に遭い、1980年に漸く日の目を見た。

前二作と同じフロント2管編成にコーラスを加えた異色作”LIFT EVERY VOICE”。

2管はW・ショー(tp)と若手で生きの良いC・ガーネット(ts)。コーラスの効果がどの程度、プラスに働いているかどうか?コーラス自体にはそれほど魅力を感じないけれど、ヒルのpはある意味で劇的に変わっている。あの不愛想な特異性が影を潜めるどころか、まるでボーカリストのように歌っている。また、トリヴァーと同じく、ハバードからの影響を強く受けているショーのサポートがイイ。若手のホープからワン・ランク上昇しようとしていた時期だけに鋭さだけでなく柔らかさが増し表現の幅が広がっている。ただ、RVGの録音が、この時代、ソロがサウンド全体に溶け込むと言うか、包まれるように変わっている所が残念です。

結構、好きな作品で、コーラスを無視して聴いている。

 

あくまで私見ですが、ヒルはBN時代、全てオリジナル曲で通したそうですが、少し、スタンダードや他人の曲もレパートリーに入れた方が作風が広がり、内容も深まったのではないでしょうか。確かに個性、頑なさも重要だが、他の大事なものに気が付かなかったような気がする。

いずれにしても、60年代のBNを代表するジャズ・マンだったのは違いありませんね。