![Kt Kt](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/19/8f36280e0a84f6ebb4e9da8f51daf170.jpg)
一通り(後半)、読み終えた。すっきりしない読後感ですね。
言ってみれば、一種の暴露本(それほどでもないけれど)なので、本来は、良くも悪くも「面白かった」部分がありそうなのに、今回はなかった。
この世の中、右があれば左もある、上があれば下も有る。つまり、著者が「かんちがい」と断じた側から言わせれば「かんちがいしているのは、むしろ、お前、中山だろう」となる。
そもそも、社会には、「かんちがい」なんて山ほどあり、この種の本が説得力を持つには、著者側に「かんちがいは絶対にない!」が大前提となる。だが、気の毒に、自らを「かんちがい者」にしている。だから、こんな本が書けるのだろう。
更に、ただの「かんちがい者」だけでなく、失礼ながら、些か特殊な性格の持ち主であることも浮き彫りにしている。
まず、もう故人となっている先輩評論家、二人に対するネガティブなコメントは、差し控えるべきだろう。特に中村とうよう氏に対するコメントは「かんちがい」の度を越え、再三、呼び捨てしている場面もあり、著者が中村氏をどう思っていたかを、露骨に象徴し、単なる校正ミスとは思えない。礼節の問題です。
また、著者の論でいけば、「かんちがい批評家は掃いて捨てるほどいる」のだから、現存する評論家を、線引きせずに挙げればいいのではないでしょうか。わざわざ「聖域なし」と、大見得を切っているのだから。表現は悪いが「死人に口なし」を狙い、自分を「安全地帯」に置いていると、揶揄されても仕方ないだろう。名ばかりで、自分に都合のよい「聖域」ですね。
なお、中村とうよう氏についてのポジティブな哀悼は、サイト「JAZZTOKYO」に載っています。
大西順子さんの件(前半)は、拙HP、?Blue Spirits 戯言日記(1/29)’で触れているので、先に進みます。
また、「山中さん、菊地さんのかんちがい」については、予備知識が無く、あまり興味が湧かないのでパスします。
次に、「油井正一的ジャズ史観の限界」の中で、アレっと思いました。
油井氏が72年夏以降、エレクトリック・マイルスに終始否定的であった、と書かれている。
僕の記憶では、逆に肯定的だった、との記憶が強い。「ビッチェズ・ブリュー」が発表された際、ヨアヒム・ベーレント氏が、否定的であったのを、油井氏が諭した、という話を何かの本で読んだ事がある。事実、彼は「ジャズ名盤物語」の中で「ビッチェズ・ブリュー」と取り上げている。とすると、油井氏は、肯定派から否定派に転じたとなる。
ここに、重要な一節が書かれている。
「つまり『ジャズの歴史物語(油井氏著作)という史書はエレクトリック・マイルスに代表される70年以降のジャズを否定する立場の人物によって書かれたともとれる」と。トゲのある文だ。それに反し「とれる」という表現がなんとも軟弱ですね。
たとえ、中山氏が史書等の再読、再検討の理由を後述しても、これは、飛躍、拡大解釈し過ぎです。
70年以降のJAZZがエレクトリック・マイルスだけに代表されてはいないのも、周知の事実。
「神様、仏様、マイルス様」を唱える中山氏にしてみれば、自分の意に反するかって大御所と言われた油井氏、および「ジャズの歴史物語」は、目の上のたんこぶかもしれませんが、自己の主張を正当化するための方便としか映らなく、強引な決め付けに悪意さえ感じ取れる一節だ。
無差別攻撃を受けた大西順子さんに対し「黙して語らず」と注文を付けるなら、尚更、中山さんは黙って「真説・ジャズの歴史物語」を書くのが「道理」というもの。
では、何故、油井氏が肯定派から否定派に転じたのだろうか?
これは、あくまで推測ですが、エレクトリック・マイルスのアルバム作りのからくり、つまりテープ編集に、油井氏が疑問を感じ始めたからでしょう。
そう言えば、モンクの「ブリリアント・コーナーズ」のテープ編集の件も、油井氏が著作の中で初めて?明かしていますね。まぁ、批評家としての良心が働いたのでしょう。もっとも、「ブリリアント・コーナーズ」を名盤に挙げている所がなんとも・・・・・・・・・
イャー、批評家はツライねぇ~
ところで、前半の部分で、著者がSJ誌の編集長時代、評論家の総代として、ある長老から、「ジャズ喫茶店主に・・・・・・・・・・・」とのくだりがありますが、ネット時代の今、今度は、HP、ブログに対しネガティブな著者自身がその長老と同じ立場であることを、自覚しなければならない。
まだまだ、著者の「かんちがい」は散見するが、これ以上、摘発(笑)する気にならないので止めます。一言でいえば、脇が甘過ぎます。
著者が本作での悪評?を払拭する道は「中山流・間違いだらけのジャズ名盤選び、ジャズ・レコード・レビュー)を書く事しか残されていない(笑)。