boston acousticsで聴いた今日の一枚
in paris / zoot sims (united artists) *1961
ちょっと皮肉ぽい言い方かもしれませんが、我が国?でのシムスの人気はやや異常のような気がします。特にアナログの世界では、多くがマイナー・レーベルへの吹き込みと重なり、コレクター達の格好の的として、オリジナルLPはかなりの高値を呼んでいる。国内盤でさえ、エサ箱ではなかなかお目に掛かれませんね。未だに「吉祥寺のご領主さま」の執拗な礼讃が効いているようです。
「オレはゲッツより、ズート」なんて言おうものなら、オォー、アンタって相当なジャズ通よね!と一目、置かれるかもしれない。でも、決して「アルよりズート」とは言わない。「アル」とはご存知の通り、活動を共にし、幾つかのレコードでも共演している盟友「アル・コーン」の事。
語弊があるやもしれませんが、例えて言うならば、ザックリいって、ゲッツの「高級ワイン」、「大吟醸日本酒」に対し、ズートは「バーボン」、「焼酎」のように下町風情溢れるテナー・プレイを身上としている。だから、ちょっと年季が入ったジャズ・ファンには堪えられない存在なのだろう。別に格付けをうんぬんしているワケではないので、誤解なきように。
この作品は1961年、パリのクラブでお馴染みのA・ルノー(p)と録音したライブもの。ズートの作品群の中で、何故か、あまり話題に登らない作品ですが、ズートとパリの結びつきは決して浅くなく、いつも以上にリラックスしたズートの名演が聴かれる。2曲のオリジナルの他、スタンダードが7曲、収録されている点も魅力ですね。
‘Once In A While’、‘These Foolish Things’、‘You Go To My Head’といった自分好みの曲が至って嬉しいです。中でも、‘You Go To My Head’のバラード演奏はどうでしょう!同曲はもっと早いテンポでスインギーに演奏されるケースが多い中、ズートはテンポを落しメランコリーに歌い上げる。バラード演奏の極致と言っていいだろう。この一曲で買いだ!
で、こちらが泣く子も黙る超レア・人気盤「デュクレテ・トムソン」(1956年)
一曲一曲は甲乙付け難い出来にもかかわらず、こちらが入手困難なヨーロッパ原盤かもしれませんが、知名度、人気度の点で雲泥の差がありますね。
その差は、何だろう?と聴き直してみたところ、‘in paris’では曲の入り方がワン・パターン、つまり、全てルノー(p)のイントロから入り、ズートのtsが続く展開なんですねぇ。この辺りがCD(レコード)という媒体を介すると、やや単調で変化に乏しい感を与えるのかもしれません。