ひょっとして、マイルスで一番ターンテーブルに乗せた作品かもしれない。もっとも「愛聴盤」か、と問われると、自信は無いけれど。
ひょっとして、自分の中でこれがマイルスのBEST1かもしれない。
ただ、リアルタイムで初めて聴いた時、ソロ・パートがないタイトル曲が何を意図するのか、サッパリ解らず入手したのは、マイルスが路線を大きく旋回させた70年代になってから。
そして、やっと「意図」が解った。これは「アドリブ」を中核とするこれまでのジャズとの「決別宣言だ」と。「さすが、マイルス、誰もマネが出来ないことをやるなぁ~」と感心し、それ以来、ずっと回し続けてきた。
ところが、最近になって、ソロ・パートが無いのは、そんな大層なものでなく、たまたまメロディが良いので、ソロ無しで演ろう、というマイルスの発案からだそうです。いやぁ~、マイッタなぁ。
でも、そのアイディアを実行しちゃうなんて、これも凄いではありませんか。
マイルス・フリークでない自分が、これ以上、本作についてコメントするのは野暮と言うものですが、一つだけ疑問が残ります。特に‘Madness’で顕著ですが、ほぼ同じようなフレーズを何度もパラパラパラッ~と。‘MILES SMILES’から気になっていた。
もともとマイルスは音数を絞り、キーとする2、3フレーズを「間」、「イントネーション」、「強弱」を付け、繋いでいくパターンが多く、無理に発展させないのが特徴。S・ゲッツも同じタイプですが、彼の場合はフレーズ自体がメロディアスで流暢に繋いでいく。そこが天才と言われる所以ですね。その点、マイルスは結構、「ぶっきらぼう」で「バター・フレーズ」を吹かない。
それがマイルスの「美学」ですが、この辺りになると、さすがに「単調」に聴こえるには自分だけか?
それはそれとして、所有している盤は同じ再発盤の‘MILES SMILES’、‘SORCERER’と比べ「音の質」がいい。やや薄く、カッティング・レベルも低いけれど、透明感があり輪郭がハッキリしている。特にウィリアムスのシンバルがキレイに前に出てきて、タイトル曲なんか、聴き惚れてしまう。
以前から、どうしてかな、と思っていたら、ラベルの一番下に小さく‘MADE IN CANADA’と。アレ、カヴァは‘PRINTED IN USA’と記載されているのに。ラベルの「赤」の色も濃いのです。今まで気が付きませんでした。
ま、オリジナルではないので比較する事自体、ナンセンスですが、再発盤のレベルながらこのカナダ・プレスの「音の質」はちょっとしたもの。本作を覆うちょっとミステリアスな雰囲気にピッタリ。
マイルスのソロに疑問を感じつつ、BEST1に挙げる理由を自問自答したけれど・・・・・・・・
上りラスト2曲が好きだからかな、それとハンコックとウィリアムスのプレイが傑出している。芸術的な香りさえ湧き立つ。
一瞬の「ひらめき」だった‘Nefertiti’が、図らずもアコースティク・マイルスの「最後通告」として帰結する流れは、当時のジャズが抱えていた問題点、そのものであった。
ひょっとしてマイルス自身も、頭の隅に「煮詰まり感」を覚えていたのかも ・・・・・
PS HP ・ BLUE SPRITSを更新しました。