世評で、いつも‵UNDERCURRENT’と比較され、常に敗者にされる宿命を背負った一枚。
でも、ターンテーブルに乗る頻度は遥かにこちらの方が多い。もちろん、好きなC・ポーターの'I’ve Got You Under My Skin’がTOPに入っている事もありますが、実はラストにひっそり収録されているJ・ホールのオリジナル‛All Across The City’ が聴きたくて。
まるで日本の曲「雪の降るまちを」を連想させる和風メロディが心に沁みてくる。アルバムの最後、このポジションが絶妙ですね。さすがC・テイラー。
ドリル・ホールのカヴァ(ゲート・ホールド)だけど、買い替えする気はなく、RVGが録音とカッティングをしている点が物を言っている。勿論、ディレクター、V・Valentin によりBN等で聴けるゲルダー・サウンドとは似てもに似つかないVERVE音に変換されているが、それでも弾力ある音(やや丸っこく、デリケートさに欠けるけど)はなかなか魅力があります。録音はしているもののゲルダー自身がカッティングしていないレコード(VERVE)の中には、ちょっと・・・・・・・・
また、モノラル盤だからかもしれないが、カッテイング・レベルが高いのもメリット。
もう一枚、 ‛All Across The City’ が収録されているアルバムを。
作曲者ホールはソロを取らずサポート役に徹する、という変り盤(笑)。
しかし、ソロを任されたJ・レーニーが聴く者の心の穢れを洗い流すような素晴らしいソロを弾き語り、シムスの啜り上げるテナーもよく、それこそ「雪の降るまち」を粛々と進む情景が眼に浮かびます。
この作品はボサノバを始め、リズミカルな曲が多く、殊更、印象深い演奏になっている。また、ホールのもう一曲のオリジナル‛Move It’はロリンズの‛THE BRIDGE’に入っている'John S ’に似たモダンな曲想で、当時、ロリンズから強い影響を受けた事が分ります。良い演奏ですね。
所有する国内盤の音はやや団子気味なので、こちらはCDで聴いています。
こんなメロディを書くJ・ホールは、ひょっとして日本人より日本人かも。