コルトレーン死後、1969年、乃至、1970年(日本)にリリースされた作品。
それが故に、「至上の愛」を嫡子とするならば、当アルバムは庶子扱いされ、一部の方々を除き、未だ正当に認知されていません。CD時代になって、収録曲まで入れ替えされている。
オリジナル・フォーマットは、
A面が‘Transition’(1965年6月10日録音)、‘Dear Lord’(1965年5月28日録音)
B面が‘Suite’(1965年6月10日録音)
パーソネルは、JOHN COLTRANE (ts)、McCOY TYNER (p)、JIMMY GARRISON (b)、ELVIN JONES (ds)のレギュラー・クァルテット。
独善的かもしれませんが、これがコルトレーンのBEST1アルバムと思う。
「起・承・転・結」が、きっちり構成された「至上の愛」は、確かに優れた作品には違いないけれど、コルトレーンと言うts奏者の魅力としては、本作の方が上だろう。
‘ASCENSION’で「禁断の園」に足を踏み入れる直前の演奏で固められた本作は、アヴァンギャルドすれすれの凄まじいプレイが聴かれるものの、しっかりとモダン・ジャズの枠内に収まっている。
‘Dear Lord’、これほどまでに、聴く者に「安らぎ」を与える演奏は、そうざらにはない。コルトレーン、屈指の名バラード。
生前、コルトレーンはアリス夫人に「自分が生きている間は、これらの演奏を決して表に出してはいけない」と語ったそうである。
今となっては、その真意は定かではありませんが、何となく解るような気がする。
本当に、コルトレーンは優しい男ですね。