jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

日陰の男 ・・・・・ PRIME TIME / HUGH LAWSON

2024-09-29 | ジャズ・p

 

ライナー・ノーツは同じピアニストのH・パーランが書いており、ロウソンについて”underratted(過小評価)と言うよりも、“under-exposed”、直訳すると「露出不足の」、つまり「日陰の男」と評している。まぁ、42才にして初リーダー作(本作)とは、彼の長いキャリアと比較すると、的を射た表現と言える。

本レコードの特徴はまず「音」。NY録音(1977年)だが、まったくアメリカの匂いがしない。「JAZZCRAFT」がデンマークのレーベル、そして、エンジニアも名前(MICHAEL EWASKO)からしてヨーロッパ系?ということも手伝い、粘りっ気の少ないクリーンな音作りがなされている。それに加え、もともとソリッドなピアノ・タッチを聴かせるロウソンだけに、最初のアップ・テンポの‘The Highest Mountain’を聴くと、「チョット、潤いに乏しいなぁ」と感ずるやもしれませんが、逆にロウソンの初リーダー作に掛ける意気込みと感じ取るのも不思議ではありません。

また、本作では、久々にB・クランショウのウッド・ベースが聴かれるのも嬉しい。パーランもコメントしている通り、以前とはかなりサウンドが異なります(交通事故の後遺症?)。でも、伸びの良いツン・ツン・ベースが楽しめます。それと、ライリーのナチュラルで絶妙なシンバル・ワークも聴き逃すわけにはいきません。

で、中身はどうかと言うと、”The Highest Mountain”はともかく、ロウソンのオリジナル(2曲)を始めミンガス、パウエルもの、スタンダード、映画音楽等とバラエティに富む構成で最後まで聴き手を飽きさせない。

ロウソンも所属していた“The Piano Choir”のピアニスト、SONELIUS SMITH作の‘The Need To Smile’、オリジナル曲、ゴスペル・フィーリングに満ちた‘Rip-Off’では77年という時代感覚を十分表現している。そしてラスト・ナンバ-、映画‘Fitzwilly’からの‘Make Me Rainbows’。ソウルぽさを体全体で撒き散らすロウソン、イケてる。

ただ、全体に無愛想なピアノ・プレイが惜しく、いい意味での「野心」の香りが些かでも有ったならば、誰にとっても「プライム・タイム」になったであろう。
なお、ロウソンは1997年、僅か3枚のリーダー作を残しこの世を去っている。終生、“under-exposed”であった。

 

 


本音はラストに ・・・・・INVITATION / AL HAIG

2024-09-12 | ジャズ・p

 

本作の目玉を1、2曲目の”Holyland”、”Invitation”とするのは、間違いではありませんが、正しい聴き方か?と言えば疑問が湧きます。通称、ミントのヘイグといわれる"TODAY"から9年を経て吹き込まれた本作の一番の聴きものは、ラストのヘイグのオリジナル曲”Linear Motion”。ミディアム・ファーストのテンポで魅力的なメロディをモーダルに弾き切るヘイグに、「伝説のパップ・ピアニスト」の面影を探すのはまず困難だが、この”Linear Motion”に新生ヘイグを聴き取る事が正しい聴き方で、本作が単なる懐古趣味的作品ではなく、74年という時代性を感じさせてくれます。

タイトル曲の”Invitation”ではボッサのリズムに乗り、煌びやかに格調高く奏でるスタイルはやはり魅力が有ります。右手の華麗なヘイグ・タッチは健在で他のオリジナル2曲もいい出来です。ただ、”If You Could See Me Now’、”Daydream"’といったスロー・ナンバーでは、感情移入にやや乏しい所が見受けられます。自分のオリジナルと比べると、大げさに言えば別人に聴こえる時があります。そうした、傾向は、以前の演奏からも時折、垣間見えていたのも事実です。例の"TODAY"でも自作曲"Thrio"のテンションの高さに対し、他の曲は甘く流れているあたり、気になります。同じ「伝説のパップ・ピアニスト」でも、オーバニーやマーマローサと違いpに立向かう気迫とか一途さが希薄と思います。でも、その軽さが、ヘイグの魅力なのかもしれません。
チョット辛口になりましたが、1982年11月16日、急逝するまで、カンバック前より多くのリーダー作を発表するヘイグの再スタートを記念する充実した一作であることには、違いありません。

 

いっそ"Linear Motion"をトップに持ってきていたならば、本作の価値がもっと上がっていたのではないでしょうか。ヘイグの本音は、ひょっとしたらこの"Linear Motion"だったかも。まぁ、そのあたりが、「伝説のパップ・ピアニスト」と言われるようになる所以かもしれません。


㊙ 愛聴盤 ・・・・・ALL ABOUT RONNIE / RONNIE BALL

2024-03-25 | ジャズ・p

 

トリスターノ派ピアニスト、ロニーの唯一のリーダー作。トリスターノと聞くと何だか小難しいイメージが付き纏うが、サボイというレーベルのせいか、或いは、dsにK・クラークが入っているせいか、全編に亘って堅苦しい所がなく、実に心地よく、ノリの良い演奏が続く。

ロニーのpはコニッツやマーシュとのクール派セッションで聴かせる指の関節をポキポキ折るような歯切れの良い、折り目正しいタッチが特徴であるが、本作では、むしろスイング感、歌心をより前面に押し出しており、柔軟な側面を見せていて、ここが聴き所です。後年、歌伴もソツ無くこなすあたり、守備範囲は結構広く、頑ななトリスターノ原理主義者ではないようです。

そして本作の最大の聴きものはレコーディング・チャンスに恵まれず、不遇を囲っていたT・ブラウンのts。充分に与えられたソロ・スペースを生かして、伸び伸びとスムーズにtsを鳴らすブラウンは思わぬ拾い物です。クール派テナーの一人として兄貴分のマーシュとよく比較されるが、クネクネ感がマーシュに比べ少なく、よりスインギーに素直に歌うブラウンのtsを愛するファンは少なくない。ブラウンのリーダー作”FREE WHEELING”(Vanguard)は「幻の名盤」として知られている。

tbのDENNISについては、一時、ミンガス・グループに在籍していたことぐらいしか知らなく、ここでは、tbが持つ素朴な味を充分に聴かせてくれます。

 

tsとtbが絡むと「白けた流れ」が生じ、感情を押さえたクールなプレイは好きになれないと、ある人は評するけど、そうかな? なんか、別の意図を持たせたハッタリに感じます。それと全曲、ラベルのように暖色系です。

 

地味ですが間違いない一枚です。

“Bluespirits20040807”


原盤は「幻の名盤」 ・・・・・ BLISS!/ CHICK COREA

2024-01-21 | ジャズ・p

 

長らく何処かに紛れ込んでいた一枚。原盤はピート ・ラロカ(ds)がリーダーの”TURKISH WOMAN AT THE BATHS ”(Douglas SD-782)で、ジャズ・レコードとは思えぬ入浴中の裸婦達の絵がカヴァに使われている。この絵はルーヴル美術館蔵の絵画、ドミニク・アングル作「トルコ風呂」でD・エリスの作品、「エレクトリック・バス」にも使用されている。録音は1967年5月25日。リアルタイムでオリジナル盤を入手したけれど針飛びするほどレコード盤が湾曲しており、処分してしまった。ところが、1974年に発刊されたSJ誌「幻の名盤読本」に原盤がアップされ、文末に「現在はMuseから再発」と紹介されていたので直ぐ入手したけれど、後の祭りですね。

俊敏なA&Rマンとしてその筋では著名なアラン・ダグラスがプロデュースするDouglasレコードには、他にドルフィーの「アイアン・マン」が良く知られ、エヴァンスの”UNDERCURRENT”(UNITED ARTISTS盤)も彼の手で制作されている。

 

とにかく、メンバー構成が異色で、コリアはその頃、まだ新進気鋭のピアニスト、ギルモアは当時、コルトレーンに靡くテナー・マンが多い中、数少ないロリンズ派で、あのサン・ラのオーケストラ出身、そしてロリンズのバンドに所属し作品も残しているラロカ、ブッカーもロリンズの”ON IMPULSE!”に参加したばかりで意外にそれなりの繋がりはあったようです。

初めて聴いた時は、曲により一人一人が大きくフィーチュアされ、中近東を思わせるメロディや中には実験色を感じさせるナンバー等々が組み込まれていて、誰がリーダーなのか分裂気味に受け取ったけれど、今の耳で改めて聴くと、その無国籍的な演奏はなかなか面白く聴き通せます。やはり、ダグラスの感性は異質だったのだろう。

とは言うものの、野暮を承知の上でラロカのもう一つのリーダー作”BASRA”(BLUE NOTE)と比較するとどうだろう。”BASRA”の方がラロカを軸に演奏に幅、厚みがありLP1枚の出来としては間違いなく上でしょう。与太者風ダーティーなギルモアのテナーは聴き物に違いなけれど、やはりB級の域を脱していないなぁ。また、面白いことに”MARJOUN”のコリアのpは、知らずに聴かされたら70年代のマッコイと間違えそうですね。ま、センスが違いますけど・・・・・、聴く耳に因るけれど捉え方が難しく「幻の名盤」が一番、美味しい落し所ですね。

なお、このMuse盤、原盤についてライナー・ノーツで何も触れていなく、最後の最後に”Produced by ALAN DOUGLAS”とだけ記載している。Museはコリア名義にしてラロカに無断でリリースしたため、ラロカが訴え、勝訴したそうです。SJ誌「幻の名盤読本」のCMページにMuse盤が載せられ、キャッチ・コピーは「トップ・ピアニスト、チック・コリアの’67年録音の記念碑と言うべき名作」と、そら、ラロカでなくても怒りますよ(笑)。


CD盤で聴く・・・・・ TALES OF ANOTHER / GARY PEACOCK

2023-12-23 | ジャズ・p


レコードを聴いているとつい、うとうとと・・・・・精神衛生上、あまり良くないですね。やばそうな時、予防策としてアナログ・プレイヤーをオート・リフトアップ機能がついたケンウッドのKP9010にしている。ま、よく出来たプレイヤーで中古市場でも人気があり、当時の定価より高値で取引されている。今、新しく制作したら、価格は3~4倍を下らないと聞く。

CD盤なら心配なく聴けるので前から消極的に探していたところ、DU名古屋にありました(880円)。

以前にもUp(レコード)しており、再掲すると、

「初めて名を覚えたジャズ・ピアニストは、パウエル、モンク、エヴァンスではなく、いきなりキース・ジャレット。勿論、ラジオなどから流れたピーターソンとワケありのフラナガンは知っていたけれど名だけだった。ジャズ・ピアノが『こんなにカッコいい』とは・・・・・・、でも、ロイドから離れたリーダー作3枚(VORTEX)には、あの才気煥発なプレイはなく、期待が大きかっただけに、自分の視界からキースの姿は消えた、否、消してしまった、という言い方が正確だろう。暫くして、ECMから”FACING YOU”(1971年)を発表し、話題になったけれど、自分が描くキース像とはかけ離れており、その後、ソロ・アルバム等で人気を博していたが、殆ど興味は湧かなった。

後年のある日、いつものレコード店で新譜コーナーの壁に現代アートのカヴァが一枚が飾ってあり、ピーコックのリーダー作だった。試聴させて貰い、一曲目の1/3も終わらない内に決めた。”Vignette"、誰も足を踏み入れたことがない深い森、樹海に向かい何かを求めるでもなく魅入られるように奥に進むキースとピーコック、そしてディジョネット、底知れぬ世界が広がる。若さに任せた才能ではなく、セルフ・コントロールが出来るキースが鮮やかに自分の中に蘇った。あれから、もう10年が経っていた。

車で15分位の所に青猫というジャズ・カフェがある。インテリア等々、ECMの世界を表現した店造りになっていて、初めてか、二回目の時、このアルバムをリクエストし、CD中心なので『レコードのB・・・・・』と言い掛けた所で、マスターは『Trilogyですね』と、にっこり。

この作品の聴きものはやはりB面を占める”TrilogyⅠ、Ⅱ、Ⅲ”だろう。中でもⅡは、気恥ずかしいほど甘いメロディから一転し、ff(フォルティッシモ)でドラマティックに弾き切るキース、お決まりの展開と分かっていても殺られる。

本作はピーコック名義のためキースのリーダー作としてUpされず一般的に知られていないが、ピアノ・トリオの最高峰と評するファンは少なくなく、強ち荒唐無稽な話ではないと思う。自分もその一人です。6年後、このメンバーでスタンダーズ・トリオを結成する礎になるとは、当時、誰も予測していなかった。」

 

 

今回、入手したCDは西ドイツのHanoverのポリグラムで制作されている。West Germany(1949~1990年)とは歴史を感じさせますね。

「CDは人間の可聴域、20Hz~20,000Hzの音だけを記録しているに対し、レコード(アナログ)は20,000Hz以上の音も記録することが可能で、聞こえなくとも所謂、空気感として捉えられる事ができ、アコースティックな響き具合が・・・・・」なんて、さんざん使い古された理屈を振りかざすつもりはありませんが、このポリグラム版CDはその辺りが参考になる好例じゃないか、と思います。

冒頭の”Vignette”は兎も角、レコードでも垣間見えるマッスル感が隠しようないほど現れ、眠り対策に購入したはずなのに、うとうとしてる場合じゃないですよ(笑)。アコースティックなレコードかマッスルなCDか、これは好みの領域ですね。その日の気分に任せてもいいかな。

いずれにしても、キースで一枚を、と問われたら、他人名義ながら真っ先に挙げる作品です。極め過ぎるほど、フィニッシュが効果的。

なお、このセッションが終わった後、ピーコックがキースに「これから、このメンバーで活動しないか?」と提案した所、キースは軽くスルーしたそうです。でも、恐らく、手応えは十分にして充分なので、頭のどこかに収めていたのだろう。


意外にも評価が ・・・・・HERBIE HANCOCK BLUE NOTE二作

2023-08-02 | ジャズ・p

 

巷でのハンコックの人気アルバムは一位が”MAIDEN VOYAGE”、続いて”SPEAK LIKE A CHILD”と言われる。二作の間に3年の歳月が流れ、前作は新主流派を代表する名盤と高評価を受けていただけに、次作が注目されていた。

両作ともにそれぞれ一つのコンセプトに基づいたアルバム作りがされ、注意深く聴き込むとハンコックのプレイ自体にそれ程、距離は感じられない。ただ、出てきたサウンドはまるで違う。大まかに言えばそれが1965年と1968年の違いだが、コルトレーンの死(1967年)が絡んでいる点を見逃すわけにはいかない。ジャズ界は密かに剛から柔へ舵を切ったと言えるだろう。

”SPEAK LIKE A CHILD”はピアノ・トリオ +3本のホーン、しかもホーンは後方でアンサンブルに徹するといった斬新なシフトが当時、話題になり、更にその抒情性とカヴァから滲み出る安らぎと一体化され評論家、ファンの間で絶賛に近い高い支持を受けた。

ただ、自分はどうか(リアルタイム)、と言えば、正直、困惑した。自分が好きなハンコックは新主流派の中でも、ソウル、ファンキーぽさを失わず、時にはフリー系までハードに切り込むプレイなので、自分が求めるハンコックではなかったし、むしろハンコック自らレベルを下げているようにも感じた。

この時期、プロデューサーはライオンではなく、D・ピアソンが多くなり、当作も彼になっている。どちらかと言えば、柔らか系、甘め系のスタンスですね。また、その前年、A&MレコードでCTI(クリード・テイラー) シリーズ(代表作が”A DAY IN THE LIFE / W・モンゴメリー)がスタートし、ハンコックも何作か、そのシリーズに参加し、少なからず影響を受けたのではないか?

我が国では「大傑作」とも言われるが、DB誌では二つ星半だった事実は何故か伏せられ、表面化しなかった。恐らくDB誌の評者はハンコックの本当の能力を力点にして、こんなものではない、と評したのだろう。それに反し、我が国の・・・・・・・

続編の”THE PRISONER”は更に5本のホーンを加え、今度はソロを取らせ、自らエレピも弾き、進化?のほどを披露しているが、甘みもかなり添加されている。”SPEAK LIKE A CHILD”を絶賛した手前、提灯持ち評論家達は後に引けず、同様に褒めたが、さすがに確かな耳を持つファンは反動で「駄作」と切り捨てた。

その後、数年、暗中模索時代を経て1973年、”HEAD HUNTERS”で大ヒットを飛ばしたが、ここにも自分が大好きなハンコックの姿を見つけられなかった。


暑気払いに ・・・・・FLIGHT TO DENMARK / DUKE JORDAN

2023-07-04 | ジャズ・p

 

レコードの整理中、目に留まった一枚。もう何十年もターンテーブルに乗せていない。

70年代中期、フュージョン、エレクトリック・ジャズがジャズ・シーンを席巻する中、オーソドックスなJAZZを愛するファンから瞬く間に絶大な支持を受けたアルバム。ジョーダンはこれ以後、それまでの不遇を吹き散らすかのように次々に新作を発表していき、それほど熱心なジョーダン・ファンでもない自分にしても、そうした復権は喜ばしい限りであったが、本作が何時の間にかピアノトリオの名盤と持ち上げられるには些か抵抗を覚えた。お馴染みの自作曲、スタンダード・ナンバーを時折、往年の閃きを見せながら淡々と弾くジョーダンに共感を抱く一方、カクテル・ピアノ寸前の「困った迷盤」に映った。

あれからもう半世紀が経ち、トーマス・フラーの名言の一つ「結婚前は両目を大きく開いて見よ、結婚してからは片目を閉じよ」に沿って(笑)、聴き直そうと久し振りに針を降ろした。

ジョーダンの特徴の一つに、時々、フレーズの語尾をチラッと高域に跳ね上げ光沢感を持たせるプレイが挙げられるが、聴き様によっては媚びを売っているようにも聴こえる。真相は定かではないが、マイルスから今で言う「パワハラ」を受けたのもこの辺りに原因があるのではないか。マイルスは、ジョーダンを毛嫌いした他に、フラナガンも認めなかったそうですね。マイルス王国の我が国で、そのジョーダン、フラナガンが人気者になるとは何ともはや・・・・・・・・・・・・・・・

今更、”BARNEY / B・WILEN盤(RCA・1959年)の、取分け”Lady Bird”での止まる事を知らぬ躍動的なプレイを持ち出すほど野暮ではないけれど、今までの印象が完全払拭されるまでは至らなかった。

人間がまだ出来ていないのでしょう(汗)、名言が耳に痛い。

 

 

昔は気付かなかったけれど、「音」が思いの他、芳しくない。ただ、この冴えない音と寒々しいカヴァが意外にマッチし聴き手を感傷的にさせているのだろう。もし、好録音だったならば白けてしまうかも(笑)。

所有盤は2ndもので、初版盤はセンター・ラベルの”SteepleChase Records”などに黒の枠が付いていない。

 

なお、本件に無関係ですが、フラーの名言をもう一つ、

「嘘には足がない。だが、スキャンダルは翼を持っている」。今の世相を400年も前にズバリ、言い当てている(笑)。


今更ですが、傑作です ・・・・・ BLUES FOR THE VIET CONG / STANLEY COWELL

2023-03-07 | ジャズ・p

 

春休み、通っていた自動車教習所のスクール・バスのカー・ラジオからロリンズの「アルフィーのテーマ」(DIFFERENTLY)が流れた。感ずるものがあり、即、モダン・ジャズを聴くと心に決め、京都に戻った時、下賀茂高木町から一本松に変わった新しい下宿先に荷物を置いた足で荒神口の「シァンクレール」へ直行、赤い絨毯を上った。

当時のSJ誌の掲載広告です。

 

何から何まで分からない中で、ロイドの”FOREST FLOWER”が掛ったのは、今、思えば幸運だった。エアメール便でいち早く「シァンクレール」に入荷していたのだろう。他のジャズ喫茶はどこもまだ置いてなかった。いきなり、キースの名を覚えた。次にインパクトを受けたピアニストは”WHY NOT / MARION BROWN”を聴き、ぞっこん惚れ込んだカウエル。1stリーダー作がこの”BLUES FOR THE VIET CONG”(1969年、英ポリドール)

 

 

初めて聴いた時、自分勝手な期待感(先進的でアコースティク一本鎗)が大き過ぎたのか、やや古いスタイルの曲からエレピ(2曲)まで聴かせる広角スタンスにやや戸惑いを隠せなかったけれど、今回、改めて本腰を入れて聴き直した所、ファースト・インプレッションが消し飛んだ。アップ・テンポの3曲は期待していた本線の通りで、取り分け”The Shuttle”は中~後半に掛けて怒涛の勢いで迫る情念のうねりに圧倒される。

また、タイトル曲の「ベトコン」(南ベトナム解放民族戦線)とカウエルの接点?は知らないけれど、兵力で勝るアメリカ軍を敗走させた「ゲリラ戦術」の不気味さをエレピを使い、これでもか、と演出している。ブギウギ調のロジャース・ハート作”You Took Advantage Of Me”にしても、自分の文脈に落し込み、しっかりと自身の語法で表現している。いずれも、「なんでも出来まっせ」なんて安易な発想から生まれたものではない。

傑作にランク・アップした要因は JIMMY HOPPSのドラミングです。煥発にして多彩なHOPPSに背後からインスパイアーされたカウエルはキース、コリアに勝るとも劣らぬ初リーダー作を誕生させた。ビシッ、バシッ、シャーン、ドスーン、ホント聴き物です。

なお、余計なお世話ですが、再発モノの中に音が冴えないヴァージョンがあるそうなので、ここは是非、英ポリドール盤(オリジナル盤)のご用意を。

 


別の世界の人気者 ・・・・・STANLEY COWELL

2023-02-24 | ジャズ・p

 

此のところ、DU名古屋絡みの記事が続き、今回のネタも。

先日、買取査定に出した20枚の中にカウエルのギャラクシー盤が2枚入っていて、それが予想外の高査定でした。まぁ、精々、三桁の中~ほどと皮算用していたが、なんと四桁を、それもそれぞれ英世が複数枚に近い査定をはじき出した。スピリチュアル・ジャズ、JAZZ FUNKの世界で人気の曲が収録されているそうで、自分はこの分野に疎く「猫に小判」でしたね(笑)。

久々に、この”SIENNA”をターン・テーブルに乗せた。1989年に録音されたSteepleChase盤、60年代後半からメキメキと頭角を現し、独特のエモーショナルなプレイが注目された頃の彼とは別人の如くあくが抜けた演奏が展開されている。モンクとパウエルの曲が一曲ずつ、他の五曲はカウエルのオリジナルと言う構成です。長めの曲の演奏時間をもっとコンパクトに仕上げた方が良い結果になったのではないかな。

A-2”I Think It’s Time To Say Goodbye Again”(Cowell)はペッパーの”SEPTEMBER AFTERNOON(ギャラクシー) ”の中の”Goodbye Again”と同曲です。このアルバムは名作”WINTER MOON”の翌日、ストリングス抜きのコンボで録音された一枚でカヴァが二種類あり、こちらの方を良く見掛けます。もし、破局した二人が聴いたら、間違いなく泣き崩れる「慟哭のアルト」が全面にフィーチャーされている。後期ペッパーを象徴する名バラードですね。

 

 

ついでにロリンズのグループでの録音を思い出しました。1974年、スイス・ モントルー・ジャズ祭でのライヴもの。

 

 

ロリンズの左後方にカウエルの姿が映っています。”To A Wild Rose”のロリンズのプレイが評判でしたが、祭りを意識してか、全体にラフでカウエルとしては演りにくかっただろう。

 

 

キース、コリアと共に若手有望ピアニストとして注目された時期の作品を。

左上が”WHY NOT / MARION BROWN”(アヴァンギャルド・レーベル ESPからレコーディング・デビュー)、右上が”THE RINGER / CHARLES TOLLIVER”(実質的MUSIC INC.の1st作)、下はリーダ作、左から初の”BLUES FOR THE VIET CONG”、”BRILLIANT SIRCLES”、”ILLUSION SUITE”。

 

 

いずれも問題作、話題作、名盤、傑作、等々の冠が付く作品ばかりです。凡作など一枚もありません。以前UPしているソロ・ピアノの”MUSA”ははみ出してしまうので已む無く外しましたが、カヴァを含め最高ですね。また、トリヴァーとのMUSIC INC.で70年代初頭、一世を風靡している。

2020年12月17日、この世を去っている。享年79。


伝説の「ジャズ喫茶の人気盤」・・・・・ AFRICAN PIANO / DOLLAR BRAND

2023-02-03 | ジャズ・p

 

嘗て津津浦浦、ジャズ喫茶がある街で、この”african piano"が流れない日はない、とまで言われた人気盤。「アフリカの苦悩をピアノに叩きつけて・・・・・」と言うキャッチコピーが付けられるほどの異色作で録音は1969年10月22日、コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルでのライヴ。

先日、DU(名古屋)へ行った際、ヒット作なので出玉も多く、値段違い(680円~)で3枚もあり、780円(国内盤)ものを拾ってきました。

1973年に国内盤がリリースされ、ジャズ喫茶の激戦地、東京ではいつもどこかで流れていたそうです。ただ、偶々なのか、自分は地元で一度も聴いた経験がなく、辛うじてFMのジャズ番組で一、二度?ほど聴いた位で、どんな感じなのかサッパリ記憶がありません。

左手のシンプルなリフ・フレーズに、あぁ、これか、と記憶が朧気に戻りました。

ある時は童謡のような可愛いらしさ、ある時は落雷のような激しさ~C・テイラーばりのアヴァンギャルド・タッチ、ある時はF・レッド擬きの旅情風等々、ソロ・ピアノの退屈感を与えない建付けがしっかりなされ、鍵盤を打つタッチも緩まない。もう、パーフェクトですね。

ジャス喫茶のような閉鎖された薄暗い穴倉で、この手のpを聴かされたら、そりゃあ、催眠状態になるのも無理ないかもしれないなぁ(笑)。色々な仕掛けがシナリオ通り整然と運んでいくライヴ演奏、左手のスタティックな、右手のダイナミックな世界はまるで一種の儀式を思わせる。ただ、冷静に二、三回聴くと、意地悪かもしれないが、これ全てスコアに落とし込んでいるのではないか?と疑問が徐々に膨らんでくる。

余計なことだけれど、知らずに聴いて、果たして多くの方々のレヴュー、コメントに見られる「アフリカの大地」を直ぐに連想できるだろうか ? 行った経験が無いのに・・・・・、50年以上も前のアフリカってもっと渾沌としたイメージしか湧かないけどなぁ~

そのギャップが人々を惹き付けたのかもしれない。ミステリアスなカヴァも効果的、並みの作品ではない事は確かです。

ダラー・ブランドのpはレコードよりライヴで実際に観て、聴いた方が実像、魅力をつかみやすいタイプだろう。