「習ったことがある」は自慢用語の一つだが、「していたことがある」と同類で、その言葉は「いま」には役に立たない。
「とうとう身につかなかった」の言い換えのように聞かせておいて、鼻はヒクヒク動いているのが目に見える。
ごつい顔をしたおやじが、「バレーの基礎だけは習ったことがある」などと言い出すと、これはもう気味が悪い。
「むかしとんとんあったけど」の昔話や過去の出来事は、面白い話になりやすい。
だが、個人の習いごとの話などは、自分で言い出せば、出来事のカテゴリーから飛び出してしまうから、話の腰より聞く耳のほうがガクンときてしまうのだ。