割り込みという行為は、ほとんどの場合好意をもっては迎えられない。
空気を掻き乱す、いま風の表現を使えばKKなのである。
行列に割って入る。座席に割って入る。話題に割って入る。
何となく許されるのは、行列がはっきり形成されていない場合や、座席の位置が決められていない場合だが、話題に割って入る場合は難しそうである。
行列や座席は、片手をちょっとかざしたり、頭をごくわずか下げただけで割り込みに成功する場合が多いが、話題の場合は、空間に飛び交っている言語情報という目に見えない場が相手だから、手や頭の動きだけでは、強引さが目だってうまくいかない。
割って入ったつもりでも、話題への飛び込みが場の分どりになることもある。
話題の要点が何であるかを確かめなかったり、思い違いをしてしまったり、腰の定まらないままに割り込むときにそうなる。
それまで話していた人が、こぞって謙譲の美徳にとらわれたとき、そこで話が変わってしまう。
ここで上手に転換できればよいが、シラケの因にもなる。
ジャズの演奏では、割り込みが巧みに行われる。
割り込み方と、割り込ませ方の意気が合って、その変化が聴く耳に抵抗を与えない。
そこでは、いま風のオレガオレガのがなり合いとは全く違う雰囲気が醸し出されている。
暑い夏のジリジリには、耳から入る風も涼しげなのがよい。