チェンバロのキーはピアノと白黒が逆だという話を聞いた。
昔の楽器にそういうのもあるというだけではないかと思ったが、やはりそうだった。
ときには変わったものを作りたいという人は必ず現れる。
フランスで白黒の逆転した鍵盤が流行した時期があったそうである。
おはぐろのところどころに白を散らしたようなチェンバロをどこかで見れば、チェンバロはみなそういうものかと思ってしまう。
昔の女性の歯は真っ黒だったというのと同じである。
一つが全てという見方が、平等均一指向の社会のもとでは偏った考えと思われなくなり、それがごく自然に電波に乗る。
チェンバロの響きのように、どこかもの悲しく、どこか恐ろしげである。