人間は代理をたてることで、自分が別のだじなことに向ける時間を失わないようにすることを考えました。
ほかの生物は、何ごとにも代理を立てず、みずから事にあたります。
共同作業や助けを借りることもしますが、代理は立てません。
代理を使えば、対話がだいじと言いながら、直接には話し合わず、のちの展開に負の条件をつくらない逃げ場づくりの定法もできあがります。
対話が形式化され、それが儀式のように扱われはじめると、水面下と呼ぶ腹の探り合いが必要になります。
水面下に潜るのは代理の役目をひそかに持たされた人たちです。
代理という便法は、子を産むことにさえ他人のからだを借りるという、奇妙な手法まで生んでしまいました。
代理にお任せ、みずからは苦難に望まない、それがあたりまえと思うようになったときから、人間の成長は減速をはじめました。