宇宙空間においては地球上の常識は通用しないのである。
慣性の法則により、一度動き出したものは止まらない。
抵抗する力が無いのである。
宇宙の中をあてどなく回転しながら放浪する地球も例外ではない。
万物は流転。
スペースパオーンは、この謎に挑む。
その前に、謎といえばモナリザの微笑がある。全く関係ないといえばそれまでだが。
微笑のポイントは口元だ。
感情認識の研究機関によれば、あの口元は、83%がハッピー、9%のむかつきと、6%の心配(恐れ)と、2%の怒りで表現されているらしい。
魅惑の微笑が欲しければこの練習をするといい。
出来るものならばだが。
「パーセントで言われてもなぁ。どないするん。」
・・・やっぱり謎だ。
もう一つ遺伝という謎がある。人格は環境に影響されるのか、先天的気質によるものなのか。未だ決着のつかない論争の一つ。
話は飛ぶが、先日酔っ払って出た話。
遺伝子レベルでは、男の子と女の子とではDNAの受け渡しに違いがあるという。
世継ぎ問題も先般より取り上げられているが、血統の問題は、DNAに深く関わってくる。
男の子が生まれると、父と母の血を引く。女の子の場合だと、母は同じでも、父の血というよりも、父の母の血を受け継ぐらしい。例のXYの配列によって男と女に分かれるというやつだ。
「ということは、女性が養子をもらって産んだ子は、2代続けば血は絶えるということになりますね」
「うん。女系の場合一代限り。という決まりはそういうところからきているんだ」
「なるほど。よく昔からかみさんを貰うなら、母親とおばあちゃんを見てもらえ。といわれてたことにも一理あるわけか・・。」
「いちがいにはいえないが、遺伝がもし人格形成のポイントの多数を占めるのであれば、そうともいえるわな。逆に環境が人を創るのであれば、それはパォーンになってしまうから、気をつけなきゃな」
「う~ん。・・・謎は深い。」
・・・。
・・こちら管制センター。
スペース・パォーン打ち上げ完了! まわるまわる運動に入りました。
「謎といえばさ。ぞうさんの鼻は何で長いんだろう?」
「お前そんなことも知らんの?パォーンやからや」
「意味わかんないんだけど?」
「まぁええ。ところでおまえ。今楽しいか?」
「かなり楽しく過ごさせてもらってますけど」
「じゃ。パァオォ~ンや」
「落ち込んだり、悲しくなったときはどうなるのですか?」
「あほやなぁ。決まってるやないか。ぱおーんじゃ」
「絵文字使えるんですね。」
「当りめエノキよ。パオン。」
「パォ~~ン。パオン」
「パオン。パオン。パァオーン」
・・・。
放浪する地球から放り出された狂った宇宙船スペース・パォーン。
船内で交わされる会話に、管制センター内にもれるは深いため息のみであった。
やがて2038年。スペース・パォーンは、万物の法則、遺伝の神秘、モナリザの引きつり笑いに関して、膨大な量のデータを集め突然に舞い戻った。
航海日誌にはこう書いてある。
「宇宙空間においては地球上の常識は通用しないのである。」
「慣性の法則により、一度動き出したものは止まらない。」
「抵抗する力が無いのである。」
「万物は流転。この謎を解くためには、地球に帰らねば。」
帰ってきた、彼らの言葉に管制センターは耳を疑った。
「んーォパン~ォパ。ンーォパンーオパ」
もちろん。データも全てパオーン。ンーオパ語で解読不能だった。
・・・。
彼らは真実を知ったのだ。
しかし、それを確かめる術は「パォーン!」と共に消え去ってしまった。
それ以後、地球上では喜怒哀楽パオーンが大流行し、争いや妬みの無い楽園になる。
進化とは素晴らしい。パォーンの発音が鼻を伸ばすという進化を促した。
現在では、誰も、鼻にかけたり、鼻の高さを競い合うということがなくなったのである。
パオーーン!!。