そこに行くたびに、もう何十年もこの作品を僕は目にしてきた。
イサム・ノグチ氏の丸い巨大な作品である。
サッカーボールかと思いきや、作品名は、月 である。
ほんの最近まで、この作品に対する僕の態度は、気にはなるものの、一瞥以外のものではなかった。
じっくり眺めてみて初めて、僕には彼の意図が理解できたような気がしている。
大きなクレーターだと思っていた穿たれた丸い窪み。
!。 太陽の運行によって、それは新月から満月までの月の表情を見せるのだ。
氏の本当のところの芸術性は違う処にあるのかも知れない。しかし、僕はこの発見を無邪気に喜ぶのである。
提示されてあるものに、我なりに何かを発見することは、すべからく楽しい。
芸術も人間の営為も饒舌ではないから、それもこんなで妙に嬉しいのである。