古典落語の中にはバレバナシと呼ばれるものがある。
ちょいと艶のある噺で、近頃は放送倫理というやつのおかげで、電波には乗らないものだ。
落語は高座に行くのが一番。
今日は天気もいいし、あさっては勤労感謝の日だし、紅葉もええ感じになったし、礼を破って、小生のお気に入りのさわりをひとつ。
徒然草の中にこんな詠があります。
ふたつ文字 牛の角文字 すぐな文字 ゆがみ文字とぞ 君は覚ゆる
ふたつの文字で「こ」、牛の角のような文字で「い」、直な文字で「し」、歪んだ文字で「く」。「こいしく君を想う」つまり恋文でございます。
昔はこのように風流なやりとりで、奥ゆかしくお付き合いをしたんでしょう。
先日なくなった大御所の役者さんは、女と見れば「一晩どう?」と声をかけてたようですが、若さの秘訣はエロスでもあるようですなぁ。
さて、噺にもどって、
好きあった二人が逢引の約束をします。
何処で会うかは掛け詠みで交わすことになります。
女性の方が、
君がため 春の野に出て若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ -百人一首-
と送れば、男の方は、「花野で会おう」と理解して返歌を送ります。
花さそう 嵐の庭の雪ならで ふりゆくものはわが身なりけり -藤原今経-
女は、じっと考えて、
「あーら。フリチンで来るのかしら。」
ふりゆくものはわが身なりけり、降りと振りがかかっております。
あ。失礼ついでに歌詠みのバレバナシにこんな落ちもあります。
初夜の二人。
娘「今宵ぞ千代のはじめでございます。わたくしが上の句をいたしますから、あなたは下の句をお告げ下さいまし。」
婿「心得ました。さぁ。どうぞ・・・」
娘「では参ります。マミムメモ今宵はじめてサシスセソ」
婿「・・・ラリルレロこそタチツテトかな」
-参照文献「艶笑小噺傑作選」ちくま文庫-
今宵はゆっくり呑って、柔らか頭で、もみじがりにでもいこうとおもうのですが、
雨は堪忍で。
ハレバナシ。
佳い休日を。