南無煩悩大菩薩

今日是好日也

幸福と儲けのビジョン。

2013-12-17 | 古今北東西南の切抜
(gif/source)

「なんで、あんただけ、うまいことせえへんのや、・・・うまいことして割り当てて、割戻しを取りなはれ、その方が割り当てて貰うた業者かて、儲けさして貰うて喜びまっせェ」

執拗に誘われたが、孝平は、

「今ごろからあわてて儲けてもあきまへん。闇時代の勝負は、出足がおそうて、わての負けだす。人の儲けたあとの、儲けカスはいただきまへん」

うまく割り当てて儲けられる立場にいながら、あえて公正な割り当てしかしなかった。その代り、統制が解けて自由経済になった時こそ、改めて見事な勝負をしてやるぞと彼は心に決めてかかっていた。-山崎豊子「暖簾」より-

戦後すぐの闇市で第三国人入り乱れ大儲けをするものが続出した統制経済期、物資配給の割り当てをする組合などでも役所と結託して皆が袖の下(賄賂)をため込む中で、その進めに戦地からの帰還が遅れた主人公が応える場面である。

やがて自由経済になると、このヴィジョンと公正さが大きな財産となり彼を軌道に乗せていく。

私は、レオナルド・ダ・ビンチのこの言葉を想い出した、
「幸福が来たら、躊躇(まよ)わず前髪をつかめ、後ろは禿げているからね」

つまり要諦は、幸福のカスでもなく、儲けのカスでもなく、自分のビジョンに沿ったものをつかめというようなことではないだろうか、と思うのである。
コメント
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