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毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

近畿中国帰国者支援交流センター  2011年2月13日 No.61

2011-02-13 20:41:28 | 中国事情
 2月11日(金)、あいにくの雪の降る中、「帰国者の友」の皆さんが一時帰国の私のために「お帰りなさい会」を催してくれた。
「帰国者の友」のことを書こうと思う。
しかしそのためには、まず「近畿中国帰国者支援交流センター(厚生労働省委託事業)」について触れなければならない。

「帰国者」とは中国からの帰国者だ。
正確に言うと、第2次世界大戦後、満州開拓団など民間の日本人が必死の思いで引揚げて来たが、家族とはぐれたり、家族が死んでしまったりして、中国に置き去りにされた日本人の子ども(中国残留日本人孤児)が中国の養父母に育てられ、大人になってから日中両国関係が回復したのに伴い、多くが父母の故国日本に帰国した。
残留孤児だった人を帰国者1世、その子どもたちは2世、孫世代を3世と呼ぶ。
 私は約6年前から5年間、大阪YWCA内にある近畿中国帰国者支援交流センターで日本語教師をしていた。
一般の日本語学校が若者中心であるのに比べ、帰国者センターの学習者は、1世、2世など年配や働き盛りの方々が多い。
休み時間、中国語で楽しそうに歓談する中に混ぜてもらって、よく世間話をした。もちろん私は全く中国語が話せないので、みんな日本語で一生懸命説明してくれる。半分くらいしか分からないことがほとんどだったが、私にとって未知の中国での生活などを教えてもらうのがとても楽しみだった。

 当時、帰国者センターの講師会で先輩講師から「政治の話はしないように。」と言われたことがある。彼女はおそらく親切に忠告してくれたのだが、今考えたら、とても変に思える。
私は中国の大学で全く同じことを中国人老師から言われている。不用意に政治的発言をすることは立場を不安定にし、最悪の場合は国外退去か逮捕拘留される可能性もあるからだ。それは「ノ○○○しょう」でブログが閉ざされたことにより、一気に実感した。
 しかし、日本の近畿中国帰国者支援交流センターでなぜ「政治の話はしないように」と言われなければならないのだろう。日本では言論の自由が憲法で保障されているので、逮捕されたりすることはないのに。
思えば小学校の教師をしていたときも、暗に「教育者は政治的中立を保つ=政治的発言はしない」と言う雰囲気が同僚の間に満ち満ちていた。
①「教育は中立であるべきだ」という言葉は一見正しいように聞こえる。
しかし、②「教育者は教室の弱者の側に立って学級経営をしなければならない」とも言う。
①と②は矛盾している。②の立場は「弱い立場に置かれた子どもの苦しみに気づき、寄り添い、差別を許さない教育をする」というものだ。①は「弱い子からも強い子からも等距離であるべきだ」といっているのだ。つまり、教師は教室で八方美人でいるか、何もかも曖昧にぼやかしていろ」と言っているも同然ではないだろうか。

 帰国者センターの先輩は、教育の中立を言いたかったのだろうか。私はそれ以前の問題で、彼女は教えることと政治との関連をあまり積極的に考えていなかったのではないかと思う。
なぜ中国残留孤児が存在するのか。なぜ彼らはすぐに日本に帰って来られなかったのか。なぜ帰国者問題がまだ解決しないのか。全部政治のせいだ。政治が間違ったためだ。日本が戦争に突っ走らなければ、まったく違う人生を歩んだだろう帰国者1世の、それでも凛として姿勢を正し、学び続ける姿は、いつも私たち日本語教師に「日本語をきちんと教えること」プラスαを問いかけているように思えた。

 休み時間、1世の人たちから中国の文化大革命の話を聞いたことが、私の中国行きを方向付けたと言っても過言ではない。
教師は、とりわけ日本語教師は、国際政治と歴史の知識を持ち、感覚を研ぎ澄ます必要がある、というのが私の実感だ。
広い意味で学習者の言語環境は、その学習者が育った家庭環境、社会環境と結びついているからだ。
近畿中国帰国者支援交流センターに通う学習者は、ほとんどの場合、信じられないような苦労の末に日本に帰国した経歴を持つ。
そうした彼女ら・彼らに寄り添うことなく日本語教育技術だけ堪能であればよし、と私は思わない。
帰国者に限らず、日本語を勉強する人たちのほとんどは、日本語教師を通して日本を感じる。日本語教師が、その人にとって初めて会話を交わす日本人であることも多い。
 5年間の近畿中国帰国者支援交流センターでの仕事はいろいろなことを教えてくれた。そこから自前のボランティア団体「帰国者の友」を作ることになったのである。(次号にだらだらと続く)

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