このタイトルは趙博(チョウ バク)さんが、
People's News『人民新聞』No.1476に寄せた文章からそのまま
借りた。
趙博さんは『浪花の歌う巨人・パギやん』の名で関西では
よく知られるシンガーソングライターであり、
パンソリの語り手、「歌うキネマ」の演者でもある。
今回は人民新聞編集者山田さんの許可を得て
パギやんの文章を紹介させていただく。
(彼は生まれも育ちも関西。「僕は在日関西人」と名乗っている)
―――――――――――――――――
3月17日、ソウル仁川空港。
そこで目睹・体験した2つの出来事を紹介しよう。
搭乗手続きの列で待っていると、僕の前方にインド人とおぼしき
サリー姿の女性がいた。その後ろ(つまり僕の真ん前)には、
若い日本女性が2人並んでいる。「日本人」という確証はどこにも
ないのだが、日本語を喋り黄色人種で黒い髪の毛のこのご両人、
漏れ聞こえてきた会話の内容からして僕なりに日本人と判断した。
すると、他愛もない会話に勤しんでいた2人のお嬢さんの片方が突然
「早く行けよ、このアジア系」
とのたもうた。もう片方も
「ははは、アジア系だよね」
と笑って応える。その言辞は、
明らかに自分たちの直前にいるサリー姿の女性を指していた。
「今言うたこと、通訳したろか。お前らこそはよ行かんかい、この日本系!」
とドヤすと、お2人は一瞬沈黙・・・後、再び何事もなかったのように会話に戻った。
出国手続きを済ませ、搭乗口へ向かう「動く歩道」上を足早に歩いていくと、
遥か前方で、これまた別の女性2人がキャリー・バッグを押しながら横2列に並んで、
後続の進行を妨げるかのように牛歩している。
出発時刻が迫っていたので、2人の間を小走りにすり抜けた。
その時、腕に少し接触したようだったが、構わず進んだ。すると、
「なんだよ、コイツ」と声が・・・。
すかさず振り返り、
「コイツ?誰に言うとんねん、コラ!」
と啖呵を切ると、慄いて後退するご両人。そこで、
「公衆道徳守れ、ボケ!!」
と畳みかけた。
日本人が日本人だけの世界に浸るのを心地よく思うことについて、
筆者にとやかく言う資格も能力もない。
しかし、その「日本人だけ」という同一性(oneness)が
他者性(otherness)を捨象して成立しているダイナミズムを、
当の日本人は気づいているだろうか?
前述した2人の女性2組が『周囲の人間は日本語を解さない』という
前提で言葉を弄したのは明白であろう。
「自分が何を言っているか相手には分からないはずだ」
という思い込みがあるから、侮蔑的に「このアジア系」と発したり、
プロレスラー並の体格の男に対して、無謀にも「コイツ」と
吐き捨てることができるのである。
(続く)
URL:http://www.jimmin.com
People's News『人民新聞』No.1476に寄せた文章からそのまま
借りた。
趙博さんは『浪花の歌う巨人・パギやん』の名で関西では
よく知られるシンガーソングライターであり、
パンソリの語り手、「歌うキネマ」の演者でもある。
今回は人民新聞編集者山田さんの許可を得て
パギやんの文章を紹介させていただく。
(彼は生まれも育ちも関西。「僕は在日関西人」と名乗っている)
―――――――――――――――――
3月17日、ソウル仁川空港。
そこで目睹・体験した2つの出来事を紹介しよう。
搭乗手続きの列で待っていると、僕の前方にインド人とおぼしき
サリー姿の女性がいた。その後ろ(つまり僕の真ん前)には、
若い日本女性が2人並んでいる。「日本人」という確証はどこにも
ないのだが、日本語を喋り黄色人種で黒い髪の毛のこのご両人、
漏れ聞こえてきた会話の内容からして僕なりに日本人と判断した。
すると、他愛もない会話に勤しんでいた2人のお嬢さんの片方が突然
「早く行けよ、このアジア系」
とのたもうた。もう片方も
「ははは、アジア系だよね」
と笑って応える。その言辞は、
明らかに自分たちの直前にいるサリー姿の女性を指していた。
「今言うたこと、通訳したろか。お前らこそはよ行かんかい、この日本系!」
とドヤすと、お2人は一瞬沈黙・・・後、再び何事もなかったのように会話に戻った。
出国手続きを済ませ、搭乗口へ向かう「動く歩道」上を足早に歩いていくと、
遥か前方で、これまた別の女性2人がキャリー・バッグを押しながら横2列に並んで、
後続の進行を妨げるかのように牛歩している。
出発時刻が迫っていたので、2人の間を小走りにすり抜けた。
その時、腕に少し接触したようだったが、構わず進んだ。すると、
「なんだよ、コイツ」と声が・・・。
すかさず振り返り、
「コイツ?誰に言うとんねん、コラ!」
と啖呵を切ると、慄いて後退するご両人。そこで、
「公衆道徳守れ、ボケ!!」
と畳みかけた。
日本人が日本人だけの世界に浸るのを心地よく思うことについて、
筆者にとやかく言う資格も能力もない。
しかし、その「日本人だけ」という同一性(oneness)が
他者性(otherness)を捨象して成立しているダイナミズムを、
当の日本人は気づいているだろうか?
前述した2人の女性2組が『周囲の人間は日本語を解さない』という
前提で言葉を弄したのは明白であろう。
「自分が何を言っているか相手には分からないはずだ」
という思い込みがあるから、侮蔑的に「このアジア系」と発したり、
プロレスラー並の体格の男に対して、無謀にも「コイツ」と
吐き捨てることができるのである。
(続く)
URL:http://www.jimmin.com