冬休みはもう終り、山東省への出発は明日に迫っています。
先日、福島県の友が中国の学生たちへとたくさん本を送ってくださいました。
何冊もの本の中に『原発難民の詩』(佐藤紫華子著:朝日新聞出版)があり、
思わず、手に取りました。
発行された2012年当時、著者の佐藤紫華子さんは84歳でした。
表紙をめくると冒頭に、
『放射能に
いちばん弱い花という
日本つゆ草
今は咲かぬか』
という詩があります。
福島県双葉郡富岡町に住んでいた佐藤さんは、
2011年3月の原発事故で故郷を追われました。
原子力発電所が建ったとき、知人が
「日本つゆ草はいちばん放射能に弱いから、
この花が咲いているうちは大丈夫よ。」
と教えてくれたそうです。
ツユクサ科の花は放射線で色が変わるという説もあるそうですが、
原発事故後、佐藤さんは富岡町の家に帰って確かめることもできず、
避難先で冒頭の詩を詠んだのでした。
本が出版された当時、佐藤さんは一時避難していた新潟県柏崎から
福島県いわき市の仮設住宅に移り、一人で暮らしていました。
今は震災と原発事故から5年経つのに、
復興と生活保障は課題が山積みで、
原発事故の後始末もいつ終息するとも言えない状況です。
一人ひとりの人間の生活を親身に思う想像力の欠片もない人たちが
政権を握っていることで、被災者は未だに被災者のまんまです。
「放射能は完全にアンダーコントロールされている」という大嘘で
東京にオリンピックを招致したアベ首相ですが、
私は早く世界各国が東京オリンピックを棄権してほしいと願っています。
棄権が相次げばオリンピックは実現できません。
実現できないことが早く分かれば、
工事に使うムダ金が少なくて済み、そのお金を被災者の生活保障に回せます。
『復興オリンピック』などといううたい文句に踊らされた多くの日本の民も、
またしても『全部ウソだったんだぜ、騙されてたんだぜ』という現実を直視し、
これ以上は嘘に踊らされるべきではありません。
自分の身に降りかからなかったら他人事として済ましてしまう
想像力のない、即ち、無責任で浅薄な日本社会の傾向が
目立って仕方がないのは私だけでしょうか。
原発事故を他人事と思う人が、自公政権を支えているのです。
佐藤さんは今、どうしていらっしゃるのでしょう。
「あんた方はいいもんだ。金をもらってタダ食いしているんだから。」
「双葉郡の人たちは原発推進だったんだからしょうがないんだ。」
という陰口が聞こえてくる仮設住宅で、
88歳の今も、あの庭に咲くつゆ草の花を見たいと焦れつつ
日々を過ごしていないだろうか、と思います。
『ふるさと』(佐藤紫華子)
呼んでも 呼んでも
届かない
泣いても もがいても
戻れない
ふるさとは
遠く 遠のいて
余りにも遠い
近いけど 遠いふるさと
あのふるさとは
美しい浜辺
心の底の
涙の湖に ある
『右へならえ』
戦時中もそうだった
右へならえ!
右へならえしないと
兵隊さんに叱られた
原子力発電所を造る時も
遅れていはならないと
右へならえして
この小さな日本に五十四基
ノーモア ひろしま
ノーモア ながさき
あんなにノーと叫んだのに
原爆と原発は
親戚みたいなものなのに
今まで悪寒を感じなかったのであろうか
しかも海辺にばかり
建築資材を運ぶためには
たしかに 便利
でも もしも事故が起きれば
海へ流れる
(事故のことは想定外だった)
そして そして
もっと心配なことは
燃料を燃やせば
使用済み核燃料が出るということ
私たち 女は
家庭のゴミだけで 沢山なのに
祈ることは
右ならえして
事故を起こさないで・・・・・・
---『原発難民の詩』より