goo

スケート靴




98年の冬にブルージュへ来た当時、マルクト広場のスケートリンクを見ながら夫が「ところでスケートはできる?」と聞いてきた。

何気なく、しかも偉そうに「もちろん」と返答したが、わたしの気分としては『何度もスケートに行ったことはある』くらいの意味合い。


その翌月、カナダ出張から帰国した彼が携えていたプレゼントは...

フィギア・スケート靴。

真っ白の。

仏映画「白い恋人たち」みたいな。


わたしにこれをはいて滑れと言うのだね?
毎年初日はふらふらで始まり、しばらくしてカンを取り戻し、でも靴ずれで痛いぞ、程度の腕前のわたくしに?

初心者なのに道具だけすごいというのは笑止である。
おそらく一生わたしがこの靴をはくことはないであろう。


まっさらなまま、屋根裏部屋で眠れる美女のように鎮座するフィギアスケート靴は、夫のわたしに対する幻想、その象徴のようなのである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )