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Brugge Style
紅茶と珈琲のテロワール
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実家全員紅茶党だからだと思う。
そして10代で神戸ムジカの洗礼を受けてからはさらに熱烈なお紅茶党に。
ところが15年前、ベルギーでわたしは簡単にコーヒー党に鞍替えしたのだった。
家で朝一番に飲むのはカフェオレ、11時と16時のおやつにはマルクト広場でコーヒー、夕食後にはエスプレッソ、という。
その時はおいしい紅茶を出す喫茶店が少ないから...という結論を出したが、よく考えるとそれは家でも飲まなくなったことの理由にはならない。
だからコーヒーを好むようになったのは、年をとって味覚が変わったからだと思っていた。
しかし2年半前に英国に引っ越した途端、毎朝ネスプレッソで入れるコーヒーがおいしいと思えなくなっているのに気がついた。
コーヒー党を自称する者が毎朝カップの半分を残すような状態はおかしい。
さらに年をとったのか(その通りだけど)。
朝は牛乳の入った暖かい飲み物が絶対に飲みたい質なので、コーヒー以外の飲み物と言えば紅茶しかチョイスがない(甘い飲み物が苦手、ホットチョコレートなどはパス)。
初めは紅茶では朝一番にはもの足りないような気がし、コーヒーと紅茶を行ったり来たりした末、ある時からコーヒーを必要としなくなっていた。
再び紅茶党に切り替わったのである。
さらに驚いたことには、40数年の人生で一度も紅茶党ではなかった夫でさえ、英国へ来てからは家ではコーヒーを飲まなくなった! 朝もミルクティー!
不思議なのは、ベルギーに里帰りするとコーヒーが飲みたくなることだ。パリでも絶対にそうだ。パリには紅茶専門店はいくつもあって、それぞれおいしいのに...それでもおいしい紅茶に出会う確率は、美味しいコーヒーに出会う確率よりもだいぶ低いからかとも考えられるが、ここでは「その土地の風土に合う飲み物」というのがあるという仮説を立ててみたい。
紅茶は英国の代名詞になるような飲み物だ。やはりここまで広く好まれて飲まれているのは、英国人の味覚がどうこうよりも、単に英国の水で入れると美味しいからではないか。英国もベルギーもフランスもどこも硬水であるとはいえ、硬水にも紅茶に合う硬水とコーヒーに合う硬水があるのではないか。
灘の五郷の酒がうまいのは水が酒造りに合っているからで、モロッコのミントティーがいくらでも飲めるのはあの水(あの気候)だからだ。
仏人料理家アラン・デュカスは、「テロワール」=「土地に対しての敬意」、つまりその土地固有の食文化(水質、地質、地理的位置、気候、収穫物、料理方法、歴史...)に敬意を払い料理するのを哲学としている。
和食という、ローカル性や季節に敏感な文化を持つ日本人にはなじみ深い哲学だ。
英国で飲む紅茶がおいしく、ベルギーで飲むビールがおいしく、フランスで飲むワインがおいしいというのは、「その土地で身近にある食べ物、好まれてきた食べ方」が取捨選択と適応と進化の結果であり、合理性ゆえなのかもしれない(欧州の、紅茶/コーヒーの歴史は長くないが、取捨選択の過程がおそらくその土地の水質や住人の嗜好によってなされただろうから、そこはやはりおもしろい)。
ということは、この土地にいるうちに、この土地の水で作られたもの、長い時間をかけて淘汰され洗練されてきたそういうものを十分堪能すべきだ。堪能してから次の土地に移るなら移りたい、と思うようになった。
そんなどことなくハッピーなハナシ。長い(笑)。
どこのメーカーの紅茶を飲んでいるかよくご質問頂く。
写真はわたしが毎日がぶがぶ飲む紅茶のブランド「クリッパー」。普通のスーパーマーケットで買える安い茶葉だ。日本の友達に聞くと日本でも手に入らないことはないらしい。
日中はクリッパーの「エブリディ・ティー」を濃く入れて(濃く入れた紅茶にミルクをたっぷり入れて飲むのはちなみにブルーカラーの飲み方だそうだ)、夕食後はこういうフルーツティーや、ハーブティー等を飲む。
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