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Brugge Style
大聖堂は詩の一編
前回の続きで、イングランドはサマセット州、ウェルズ市(ウェルズWellsは、英国連合王国の国家のひとつウェールズWalesとは違います)の話を。
ガーディアン紙の記事に、消費者情報雑誌 Which? の「イングランドの最も魅力的な行楽地 トップ10」という記事が載っており、ウェルズが一位だったのに啓発されて訪れた。
一枚目の写真の大聖堂ファサードは「一編の詩のよう」と賞賛されている。
ゴシック建築。
特に12世紀後半から13世紀初頭の初期英国様式。
聖遺物箱のようだ。
あの世とこの世の時空の裂け目。
特徴としては、他の多くの大聖堂では影響が見られるロマネスク様式の要素が欠けており、ロマネスク様式の制約を破った、ヨーロッパ初の「純粋なゴシック様式」の構造物...
と見なしている研究者もいるそうだ。
建築は12世紀に始まった。
つまり、英国の転機、1066年のノルマン侵攻のすぐ後からということになる。
ウェルズは、イングランド南西部に位置し、アーサー王の伝説やフェスティバルで有名なグラストンベリーの北1.5キロ、大きな都市ではバースが北東に30キロ、ブリストルが北に30キロにある。
グラストンベリーのアーサー王の伝説は、現在ではほとんど科学的な裏付けはないと見なされているものの、この辺りの自然や村には、大陸やスカンジナビアからどんどん人が入って来る前のケルト的な神秘な香りがたしかにする。
天行を見て、いわゆる魔女を名乗る人や、スピリチュアル系の方々が集まるというのもなんだか理解できるような気がする...
ウェルズ大聖堂は、704年ごろに建設アングロ・サクソン時代の教会の跡地に建てたれたそうだ。
おそらくそれよりもずっと昔から、泉が湧くこともあり、聖地のような場所だったのではないか...と想像する。
大聖堂内に入ると、ネーヴ(身廊。礼拝に参加する一般人の椅子が並べられているところね)から眺めた、ヴォールト部分(十字形教会堂のクロスになっている部分。かなりの重量がかかる)にあるハサミ型アーチの意外性に驚かされた。
こんな形、他に見たことがない。
大聖堂は上にも書いたように、13世紀のローマ・カトリックのゴシック様式である。
これに比して、ハサミ型アーチが超モダンで、コペンハーゲンのグルントヴィークス教会とか、わが家の近所にもある20世紀の英国国教会的な印象を受けたため、これは後世のものだと一見して思ったら...
ああ、知ったかぶりは嫌だなあ!
なんと、こちら、14世紀のデザインで!
ヴォールトが塔の重量に耐えられず、沈んできたため、重量を分散して支える解決策として作られたアーチなのだそうだ。
ほんとうに驚いた。
正面だけでなく、ヴォールトを支えるため、四方向にハサミ型のアーチがあるのが横から見るとわかる...
なんというすばらしき解決策。
デザインはもともと、「指示する」「目的を表す」「問題解決」という意味のラテン語で、つまり「解決策」なのであるからして!
技術関連でもうひとつ、見飽きないのは、堂内にある14世紀のAstronomical clock天文時計だ。
わたしはこういう機械仕掛け、時代によるの世界観(パラダイム)、に目がない。
有名なプラハの天文時計よりも少し古いそうで、現存する天文時計の中では2番目に古いとか。
アストロラーベ(天文観測用機器)のようなデザイン、15世紀コペルニクス以前の、ヨーロッパにおける世界観が表現されている。
15分おきにベルが鳴り(右上の像が打ち鳴らす)、騎乗槍試合をする騎士がぐるぐる回る仕掛けになっている。
倒される騎士は過去600年間、15分おきに馬から落とされている...という。ご苦労さんなことです。
昨日書いた、泉のある司祭館の庭や、こちらの大聖堂以外には、ビカーズ・クローズ Vicor's Closeも魅力的だ。
ビカーズ・クローズは、牧師の路地、ほどの意味で、ヨーロッパで無傷で現存する、最古の純粋に住宅街目的で作られた建築物(14世紀)であると主張されている。
27の住居(当初は44)、北端の礼拝堂と図書館、南端のアーチ型の門の上にあるホールから構成される。
しかも、おもしろいのは、路地が長く見えるように遠近法で先細りの設計になっているとか。
...などなど、こういった魅力的な歴史背景や、記憶の残滓がイングランドで一番小さな市を「イングランドの最も魅力的な行楽地の一位に押し上げている」。
ただし、店が閉まるのは早く、中心部にたくさんあったティールームなどは16時を過ぎたらどこも閉店...近所の人たちが運営しているのだろう。
ネットで近辺で夕食の食べられるところを探したら、「コウモリの谷」という小さな村(なんとよい名前だ!)にあるガストロパブ「三つの蹄鉄屋」を発見。
こちらとてもすてきだった。
イングランドの村はほんとうに美しい...
あなたもモエと一緒に、秋の遠足に出かけたくなったでしょう?
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