内容
祖父の火葬をあつかった自伝的な「骨拾い」、砕け散ってしまった観音像を巡る「弱き器」など、内容のゆたかさ、心理の複雑さ、人間性にせまる鋭さに満ちた、作家・川端康成のあらゆる要素がふくまれた短編全122編を収録。
読書備忘録
「日向」人の顔を見る癖になったのは祖父と二人きりで十年近く田舎の家に暮らしていた時に、祖父が盲目だから南だけが微かに明るく感じられるのだと、北を向いてほしいと思いながら祖父の顔を見つめていたから・・・
「バッタと鈴虫」好きだったんだね。
「化粧の天使達 薬」え?
「屋上の金魚」父の遺言状に千代子は自分の子ではないと書いてあった。彼女が寝室へ泣きに行った時、彼女の母親が金魚を口いっぱいに頬ばって、千代子を見ても知らん顔で金魚をむしゃむしゃ食っていた。頬ばっていた口から大きい尾が舌のようにべろりと下がっていた。って、ちょっと、これホラーでしょ?千代子は幸せになったみたいだけれど。
「愛犬安産」コリイの初産、予定日を十日過ぎても現れないから帝王切開したらで母犬はその夜のうちに死んで七頭の胎児は半ば腐敗していた。これを読んでいて祖母の家に居た血統書の付いていたチンを思い出した。何日か居なかったからどうしたのかと思っていたら、しばらくして子犬を生んだ。どんだけ出て来るの?と思いながら椅子の上に乗ってみていた。最後の子が出てきたら母犬はほかの子と違って離さないでずっとなめていた。祖母がダメだよ。と離そうとしても離さずずっとなめていたからか、眼が白くなっていた。他の子はみんなもらわれて行った。眼が見えないからか神経を使っていたからなのかちっとも大きくならなかった。ダダダと走って行っては何処かにぶつかって止まるを繰り返していた。ある日母犬のオーオーと言うのが聞こえたから、どうしたのかと庭を挟んだ祖母の家に行ったら、亡くなっていた。母犬は離れずずっと横でオーオーと泣いていた。寝たすきに祖母が離して庭に埋めた。起きた母犬が狂ったように探して庭に出て埋めた場所をくるくる回ってほじくり返していた。私が小学生の頃の話。母犬の名はチコ、子犬はトコだった。
昭和の昼ドラを見ているような気がしたお話もありました。
解説の後には小川洋子さんの「引き返せない迷路」が載っていました。