カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

山で過ごす秋休み【吊尾根~奥穂高岳編】

2013-10-17 | ヤマのこと

前穂高岳編はこちら

続きです。


すっかりガスに包まれてしまった紀美子平から、いよいよ奥穂高岳を目指して進んでいく。
わたしの苦手なトラバース道、だけど道幅はしっかりあるので足を滑らせなければ大丈夫なはず。




時々がっつり足を上げて越えなければいけない岩があったりするのだけれど、とにかく何も見えないので良く解らない。

途中ソロのオジサマとすれ違い「紀美子平まではあとどのくらいですか・・・?」と聞かれる。
オジサマも何も見えない中、寂しかったのかなぁ。吊尾根ですれ違った人はこの方だけだった。
私たちもあまりにも景色が変わらないので、二人とも写真も撮らず黙々と進んでいく。



分岐点とあるけれど、地図上に分岐はない。はて? 地図を広げて確認したり・・・
高度恐怖症の私にはもしかしてガスで良かったのかも知れないけど、あまりのガスっぷりはやっぱり辛い。
どこを歩いているのか?どんな景色なのか?前方には何があるのか?全く解らないまま約1時間半、
まるで苦行のようで、疲れもピークになった頃・・・



長い鎖場が現れた。あ、地図に合ったところまできたんだ!よし、頑張れ!滑らぬようにしっかり登りきって・・・



道標発見。”南稜ノ頭”もしかしてもうすぐ?奥穂高岳??




でもここまで何も見えないで来ているから距離感が全くわからない。
ただただ真っ白な中を歩き、疲労度もMAX、ペンキの○マークが動いて見える。
だいぶ疲れてるなぁ自分、と思ったら・・・雷鳥さん?



冬支度を始めていたんですね、足元から白くなって毛がこんもりしてきたようで・・・カワイイ♪
近づいてもちっとも逃げなくて、嬉しくて夢中で着いていったら・・・



あっ・・・。目の前にぼんやり浮かんだ奥穂高岳山頂。
そうか、雷鳥さんが導いてくれていたんだ。長々と何も見えない中歩いてきた私たちを慰めてくれたのかな。
雷鳥さんが神の遣いの様に思えて、嬉しく愛おしくて(雷鳥さんを)ギュッっとしたくなった



 
やったね!奥穂高岳3190mだ!
気高く美しく厳しい山、日本の穂高。その山頂まで辿り着くことができました。
あたりは真っ白でなにひとつ見ることは出来なかったけど、じんわり感じた達成感。
せっかく我々と雷鳥さんだけの貸切山頂だけど、じっとしてても何も見えず寒いので・・・撤収です。


 
さあ、穂高山荘まであと少し。山頂に着いた頃からガスは小雨に変わりますます見通しは悪くなりましたが、
奥穂高岳山頂から白出のコルまではこれまでと違い緩やかで歩きやすい道で助かりました。
ガスっているので急に目の前に現れたような鎖。ぼんやり眼下に赤いものが・・・あ、もう山荘なんだ。



最後の鎖と梯子は濡れていて滑りやすい。細心の注意をはらって降りていきました。



 
はー、やっと着いた。
髪の毛もびっしょり濡れたこんな時、小屋の存在のなんてありがたいこと!泊まります!



 
初めて訪れた「穂高岳山荘」なんてキレイでりっぱな山荘なのでしょうか。
日本の山岳史を知らない私でも、この小屋の取り組みや苦労、偉大さは知っていたけど、
それ以上にオーナーの山や登山者に対する思いがバシっと伝わってくる、素晴らしい小屋でした。
(昨日の小屋番さんで嫌な思いしたから、余計そう感じたのかもしれないけど)


 
ストーブの着いた自炊スペースで乾杯♪ ゆっくりと今日の疲れを癒します。
平日なのでゆったり。宿泊客は40人いないくらいだったでしょうか?みな思い思いの時間を過ごします。

3000mの稜線でこんな美味しい食事が戴けるなんて、と驚き、
三代目のご主人やスタッフの方々の温かな接客に心癒され、
居心地の良い太陽のロビー、暖炉とランプの明かりで穂高の美しい映像に酔いしれ・・・
こんな風に山の中で過ごせる時間がとても心地よく嬉しかった。


初めての穂高で楽しみにしていた稜線からの眺めも、燃えるような夕日も何も見ることは出来なかった。
でも小屋のスタッフ皆さんの親切で真面目な姿勢に今日ここに来て良かった、
と心から思うことが出来ました。山小屋のありがたさってそういうことなのかもしれませんね。




今日の台風一過の晴れ予報はすっかりハズレでした。山だから仕方ないといえばそれまでですが
明日の天気予報も良くありません、これ以上荒れることがないように、と祈りながら眠りに着きました。



涸沢へ。



【行程】紀美子平11:30→最低コル11:50→鎖場12:55→奥穂高岳山頂13:20→穂高岳山荘14:10