この数年、法学特殊講義2B(相続税および贈与税)という科目を担当しています。この科目の内容を学ぶためには、まず民法第5編の規定、とくに第900条に定められる法定相続分を理解しなければならないのですが、その計算問題(勿論、比較的簡単なケース)を出したのですが、意外に「できていない」のです。
まずは問題を御覧ください。
2.次の(1)〜(3)に登場する相続人の法定相続分を答えなさい。但し、特記なき場合には相続開始時に相続人が死亡していないものとします。
(1)A:被相続人。
B:被相続人の配偶者。
C、DおよびE:被相続人の子。
(2)A:被相続人。
B:被相続人の配偶者。
C:被相続人の子。但し、相続開始時の2年前に死亡。
D:被相続人の子。
EおよびF:Cの子。
GおよびH:Dの子。
(3)A:被相続人。直系卑属はいない。
B:被相続人の配偶者。
CおよびD:被相続人の親。
ここで直ちに正解を示すことはせず、タイトルに示したことについて書いておきましょう。
まず、民法の条文を読んでいないのだろうと思いました。また、この講義については私が資料を作っており、法定相続人および法定相続分についても記しているのです。民法第900条の各号を読めば、法定相続分は理解できるでしょう。
次に、分数の計算ができていないのではないかと思われる解答がいくつも見受けられました。各法定相続人の法定相続分を合計すると1を超えて4分の5、2分の3、2などということになるはずがないのですが、意味を理解していないのだろうと思わざるをえません。仮に1を超えてしまうと、法定相続分の合計が被相続人の遺産総額を超えるというミステリーが生じてしまう訳です。
例えば、被相続人がA、その配偶者がB、子がCおよびDとします。民法第900条によると、配偶者の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は子全員で2分の1で、その2分の1を子の人数で等分するのです。子が2人であれば子の法定相続分は1/2÷2=1/2×1/2=1/4、3人であれば1/2÷3=1/2×1/3=1/6ということです。従って、Bの法定相続分は2分の1、Cの法定相続分は4分の1、Dの法定相続分は4分の1です。合計すれば1になります。
それでは、(1)〜(3)の正解を記しておきましょう。
(1) B:2分の1 C:6分の1 D:6分の1 E:6分の1
このケースでは配偶者Bの法定相続分が2分の1、子の相続分が3人合わせて2分の1です。C、DおよびEのそれぞれの法定相続分は、2分の1を3等分することによって得られるから、6分の1となります。
(2) B:2分の1 C:0(相続開始時の2年前に死亡しているため) D:4分の1 E:8分の1(Cの子であるため、代襲相続人となる)
F:8分の1(Cの子であるため、代襲相続人となる) G:0 H:0
基本的には(1)と同じですが、Cが相続開始時の2年前に死亡していた点に注意してください。
代襲相続人が存在する場合には、次の手順で考えるとよいでしょう。
①まず、Cが相続開始時に生存していたと仮定すると、法定相続人はB、CおよびDとなるので、法定相続分は次のようになります。
B:2分の1 C:4分の1 D:4分の1
②実際にはCが相続開始時より前に死亡していたので、Cの子であるEおよびFが代襲相続人となります。EおよびFの法定相続分はCを引き継いだものとなるため、Cの法定相続分を代襲相続人の数で等分することとなります。従って、Cの4分の1を2等分して8分の1となるのです。 一方、GおよびHはDの子であり、Dは相続開始時に生存しているため、Dが相続欠格事由に該当する場合、または廃除された場合を除き、法定相続人となりえません。
(3) B:3分の2 C:6分の1 D:6分の1
このケースではAに直系卑属がいないため、親、つまり直系尊属であるCおよびDが法定相続人となります。法定相続分は配偶者が3分の2、直系尊属が2人合わせて3分の1ですから、CおよびDの法定相続分は、それぞれ、3分の1を2等分して得られる6分の1です。
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