2009年3月20日から22日まで、学会の関係で札幌市を訪れました。その時に撮影した写真などを掲載しておきます。
なお、札幌市電の営業区間は、長らく西4丁目〜すすきの(電車事業所前経由)でしたが、2005年に西4丁目〜狸小路〜すすきのが開業したことにより、完全な環状運転を開始しました。
街の中、しかもビルの上に観覧車があるというのは、考えてみると変な話なのですが、所々にあるものです。2008年9月に訪れた鹿児島市にもありましたが、上の写真は、私が宿泊していた札幌東急インの部屋から撮影したものです。
2009年3月20日の夜、およそ8年4か月ぶりに札幌駅を利用しました。すぐに地下鉄南北線に乗り換え、すすきので降りました。前回の訪問時には札幌駅前のホテルに宿泊し、麻生(あさぶ)や真駒内(まこまない)、新札幌を歩いたにも関わらず、繁華街のすすきのを歩いていません。地下鉄で通過しただけなのです。そこで、今回はすすきのを歩いてみようと思い、ホテルを選びました (実は割引券を持っていたからでもあるのですが)。
翌朝、上の写真を撮影してみました。観覧車は、このホテルの北側、狸小路というアーケード街の中にあるビルの上に設置されているようです。
ホテルから出て、すすきの駅まで歩きます。すすきのと言えば、日本中で有名な歓楽街であり、駅から中島公園に向かうほう、つまり南側には風俗営業の店がたくさん並んでいます。しかし、土休日の朝は、自動車の通行量が少なくないのに、人通りは少なく、眠っているかのようです。
私は、20日の夜、ホテルのチェックインを済ませてすぐにこの周辺を歩いたのですが、何故か博多ラーメン、もつ鍋など、九州の料理を扱う飲食店が多かったことに驚きました。観光客より地元の客が足を踏み入れる地帯を通ったのかもしれませんが、九州料理を扱う店が多い一角があるのです。勿論、北海道料理店もたくさんあります。しかし、地元の人間がどれくらい利用するのでしょうか。故宮脇俊三氏は、『最長片道切符の旅』という名著の高山駅周辺の箇所で「土地の人間相手ですから珍しいものはない、とは意義深い。土地の人は『高山料理』など食べないのである。それはどの町だって東京だってそうだ。お上りさんの入る店に京都の人は見向きもしない」と書いています(新潮文庫版226頁)。札幌市在住の方々に、この宮脇氏の記述はどの程度まであてはまるのでしょうか。
以前に札幌を訪れた時にも感じたのですが、気候などを別にすれば、札幌駅周辺からすすきのまでを歩いていても、東京近辺を歩いているのと変わりません。東京の延長とすら思えてきます(この街の一部だけしか触れていないのですが)。首都圏に本拠を置く百貨店やスーパーマーケットの支店が多いこと(例、西武百貨店、イトーヨーカドー、東急ストア)、逆に札幌市に本拠を置くドラッグストアや家具屋などが首都圏に多いこと(例、ニトリ、ツルハドラッグ)が、東京の延長という印象を強めるのでしょう。また、街を歩いている人たちに訛りがないようで、そのことも影響しているのかもしれません。
札幌市には市電が走っています。奥に電車が止まっていますが、そこがすすきの電停です。地下鉄整備が進んだことなどによって、市電は廃止されることになっていたようですが、西4丁目~すすきのの路線は残りました。20日の夜に乗ってみたのですが、意外に利用客が多く、存在意義は十分にあるようです。地下鉄南北線のすすきの駅は、交差点の下にあり、市電と連絡しています。
ところで、私は、ここで「すすきの」と平仮名で書いています。これは札幌市交通局の駅名表記にならっているのですが、本などによっては「薄野」、「ススキノ」と書かれていることもあります。そもそも、すすきのはこの辺りの通称とも言うべきものでして、札幌市の地図を見ても正式な住居表示などとしては登場しません。私が宿泊した札幌東急インの所在地は札幌市中央区南4条西5丁目となっています。この辺りでは、大通を基準としてその北にあれば北何条といい、南にあれば南何条といいます。そして、東西を何丁目と言い分けます。そのため、交差点には、たとえば「南4西5」と書かれています(同じ交差点でも信号機によって表示が異なることがあります)。従って、歩くのには最も楽でしょう。これまで私が歩いた中で、京都市と大阪市の中心部における道路のわかりやすさには感心したのですが〔京都市は東西に伸びるメイン(?)の道路が「四条」などとなっています。大阪市の場合は、南北に伸びる道路が「筋」、東西に伸びる道路が「通」となっています)、札幌市はさらにわかりやすいのです。
〔追記:さらに記せば、わかりやすさでは札幌市、大阪市の順でしょう。〕
ラッピング広告車となっている市電です。札幌市電は、今ではどこの地方にも普及しているVVVF制御を日本で2番目に採用しました(最初の採用は熊本市電)。以前から進取の精神に富んでいたと言えます(ローレル賞を受賞した連接車を導入したり、ディーゼルカーを導入したりもしています)。
この市電の走行区間は実に面白いものです。方向幕に「西4丁目~すすきの」と書かれていますが、すすきの電停から西4丁目電停までは数百メートルしか離れておらず、地下鉄南北線の真上の道路を歩いても数分で着きます(地下鉄ですと大通駅の次がすすきの駅です)。しかし、この市電は45分ほどかけて両電停を結びます。すすきのを発車すると西に向かい、資生館小学校前電停の所で左折して南に向かいます。幌南小学校前を出て右折して西に向かいます。この辺りは完全に住宅地となっており、郊外型店舗も見受けられます。電車事業所前の手前でまた右折して、今度は北に向かいます。そして、西15丁目で右折して東に向かいます。そして西4丁目に到着します。すすきのと西4丁目がつながっていれば完全な環状線になりますから、どうして残しておかなかったのかとは思います。
さて、地下鉄のすすきの駅に入りました。この地下鉄がまた独特です。札幌市営地下鉄は南北線、東西線、東豊線の3本から構成されていますが、そのいずれも中央案内軌条式を採用しています。
上の写真では少しわかりにくいかもしれませんが、線路のように光っている部分が案内軌条といい、真ん中に敷かれています。車両は、この案内軌条を真ん中に抱え込むような形で走ります。つまり、東京モノレールや多摩モノレールなどの跨座式モノレールとよく似た構造になっているのです。そして、通常なら鉄製の線路が敷かれているはずの部分には線路が敷かれておらず、道路のような舗装が施されています。上の写真ですと、黄色い帯が2本見えますが、そこが舗装の部分です。車両の台車には、通常の鉄道車両で使われる金属の車輪ではなく、ゴムタイヤが付けられています。そのため、レールから発せられる騒音はほとんどありません。
但し、道路の上を走っているようなものなので、自動車が道路を走る時に感じるような振動があります。いや、振動という点では自動車以上に激しいというべきでしょう。これは、やはり案内軌条式を採用する新交通システムと共通する点で、舗装状態やゴムタイヤの状態が悪いと上下左右の振動が激しくなります。私は、新交通システム路線では 東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)、東京都交通局日暮里・舎人ライナー、大阪市交通局南港ポートタウン線、神戸新交通ポートアイランド線、神戸新交通六甲アイランド線を利用したことがありますが、いずれも振動が激しく、しかも速度が出れば出るほど振動が複雑になり、乗り心地が非常に悪かったことを覚えています。ほとんどの新交通システムが赤字を抱えているといいますが、原因の一つは振動にあるかもしれません(運賃が高いことも難点です)。
札幌市営地下鉄は、横浜市営地下鉄などと並び、赤字額が大きいことで知られています。南北線を利用している限りでは、どうして赤字額が大きいのかわかりかねる部分もあるのですが、このような特殊なシステムでは設備維持費が多いのではないでしょうか。鉄の車輪よりゴムタイヤのほうが磨耗しやすいでしょうし、鉄製のレールより道路の舗装のほうが早く傷むからです。
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