ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

交通政策基本法と国土強靱化基本法の双方を改正する法律

2021年01月06日 08時00分00秒 | 法律学

 2021年に入って早々、COVID-19の勢いが止まりません。有名人が次々に感染していますし、公営競技では再び無観客で開催する所も出ています。大相撲初場所はどうなのでしょう。私の仕事に関係することを記せば、入試などはどうなるのか、というところです。

 そのような状況ですが、昨年12月5日に閉会した第203回国会で、気になる法律が成立していました。衆議院議員提出法律案(提出者は衆議院国土交通委員会委員長)第5号、令和2年12月9日法律第73号の「交通政策基本法及び強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法の一部を改正する法律」です。このブログでも交通基本法案、交通政策基本法を取り上げていますし、大東法学26巻2号(2017年)において「交通政策基本法の制定過程と『交通権』〜交通法研究序説〜」という論文を公表した私としては、非常に気になります。しかも、ただ交通政策基本法のみを改正するのではなく、国土強靱化基本法も併せて改正しているのです。

 まずは法律の条文を紹介しましょう。なお、数字は算用数字に改めています。また、改正法は慣れないと非常に読みにくいので、一部、文字の色を変えています。

 

 (交通政策基本法の一部改正)

第1条 交通政策基本法(平成25年法律第92号)の一部を次のように改正する。

  第3条第1項中「進展」の下に「、人口の減少」を加え、「及び地域経済の活性化」を「並びに地域経済の活性化、地域社会の維持及び発展」に改め、同条第2項中「当たっては」の下に「、国土強靱化の観点を踏まえ」を、「こと」の下に「等を通じて、我が国の社会経済活動の持続可能性を確保すること」を加える。

  第16条中「国は」の下に「、少子高齢化の進展、人口の減少その他の社会経済情勢の変化に伴い、国民の交通に対する需要が多様化し、又は減少する状況においても」を加える。

  第17条の次に次の一条を加える。

  (公共交通機関に係る旅客施設等の安全及び衛生の確保)

 第17条の2 国は、国民が安全にかつ安心して公共交通機関を利用することができるようにするため、公共交通機関に係る旅客施設及びサービスに関する安全及び衛生の確保の支援その他必要な施策を講ずるものとする。

  第18条中「前2条」を「前3条」に改める。

  第20条中「活性化」の下に「、地域社会の維持及び発展」を、「形成」の下に「(基幹的な高速交通網の形成を含む。)、輸送サービスの提供の確保」を加える。

  第21条中「強化」の下に「、人材の確保(これに必要な労働条件の改善を含む。)の支援」を加える。

  第22条中「国は」の下に「、国土強靱化の観点から、我が国の社会経済活動の持続可能性を確保することの重要性に鑑み」を加える。

 (強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法の一部改正)

第2条 強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(平成25年法律第95号)の一部を次のように改正する。

  前文のうち第2項中「おそれがある」の下に「。また、近年、地震、台風、局地的な豪雨等による大規模自然災害等が各地で頻発している」を加える。

  第8条第2号中「国家」を「行政、情報通信、交通その他の国家」に改め、同条第4号中「より」の下に「、地域の活力の向上が図られ」を加える。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

 

 国会に提出される法律案には、必ず提案理由が付されています。この法律については、次のとおりです。

 「交通に関する施策の一層の推進を図る観点から、交通の機能の確保及び向上を図るに当たっては、人口の減少に対応しつつ地域社会の維持及び発展に寄与するものとなるようにすべきこと並びに国土強靱化の観点を踏まえ我が国の社会経済活動の持続可能性を確保することが重要であることを規定する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」

 議員立法であるだけに、参考資料がどれだけ手に入るかわからないのですが、何らかの形で論じたいと思っています。


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