今年度も基本法学概論という科目を担当していますが、用語の意味、とくに「●●の原則」の意味をしっかりと理解しているのか、と疑いたくなる答案がいくつか出てきました。
まず、民法の三大原理として、私的自治の原則と無過失責任主義(無過失責任の原則)の両方が記されている答案です。それぞれの原則の意味を理解していれば、両者が衝突すること(矛盾すること)がわかるはずです。無過失責任は、過失責任の修正として言われる訳ですから、あくまでも例外です。もし無過失責任の原則が通るのであれば、その時点で私的自治の原則は意味を失います。
また、私的自治の原則と契約自由の原則が並べられている答案もありました。講義の場でも言いましたが、契約自由の原則は私的自治の原則の一部であり、完全に別物という訳ではありません。しかも、今回(6月22日実施)においては、Ⅱの問題文をよく読めばⅠの正解にもたどりやすくなるようになっています。
上記とは全く別の話となりますが、基本法学概論では、将来のことを考えて、新聞記事などを利用した時事問題(あるいは高校の政治経済レベルの問題)を出します。いつも正答率が低いのですが、今回も同様です。国際通貨基金の略語であるIMFを聞いたことも見たこともない大学生は多いのでしょうか。また、金融緩和や財政出動と言えばアベノミクス、日本銀行と出てきて欲しいところですが、アベノミクス、日本銀行のいずれの言葉も、やはり聞いたことも見たこともないのでしょう。長らく同一労働同一賃金ということであれこれの議論がなされてきたのですが、それについても壊滅的でした。「高労働高賃金」とか「最低労働最低賃金」とか、意味のわからない言葉が続出しました。
財務省がOECDのEconomic Outlook 98を引用・参照しつつ、G7諸国+ギリシャの政府債務残高(対GDP比)を紹介しており、これを利用した問題も作成しましたが、日本の政府債務残高が対GDP比で200%を超えることは知っておいて欲しいことです(ちなみに、G7諸国で100%未満であるのはドイツとカナダのみです。また、ギリシャは2016年度において200%となっていました)。
今後も、政治分野、経済分野、国際分野のニュースを題材にした問題を作り、小テストに出しますので、よく読んでおいてほしいものです。
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