今回は二題です。
このブログでも何度か日高本線を話題として取り上げました。この路線は苫小牧駅から様似駅まで、140キロメートルを超える路線ですが、2015年1月の高潮被害によって鵡川駅から様似駅までの116.0キロメートルが不通となっています。沿線自治体で鉄道廃止、バス路線への転換を決定したのは2019年11月のことです。
そして、2020年8月12日、沿線自治体は、鵡川〜様似の廃止について9月にJR北海道と協定を締結する方針を固めたようです。苫小牧民報社が8月13日付で「日高線来年3月廃止へ 不通から5年7カ月 来年4月バス転換」(https://www.tomamin.co.jp/article/news/main/26238/)として、日本経済新聞社が8月13日14時57分付で「JR日高線の一部区間、21年3月にも廃止へ」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62595810T10C20A8L41000/)として報じています。なお、どちらも有料会員でなければ全文を読めません。Yahoo! Japan Newsには8月13日16時12分付で「日高線来年3月廃止へ 不通から5年7カ月 来年4月バス転換」(https://news.yahoo.co.jp/articles/e5f5e4037742ec99f7ea8fc0c9aa69e5be87bbd5)として苫小牧民報社の記事が転載(?)されています。
JR北海道はこの100キロメートルを超える区間の廃止後18年間のバス運行費や地域振興費などとして25億円を拠出することなどを提案しており、8月12日にはこのことが沿線自治体の長などの間で議論されたようですが、同意がなされたということでしょう。浦河町は長らく鉄道の維持を訴えていましたが、他の沿線自治体がバス転換に向いていたことで、結局は鉄道の廃止に同意するようです。
ただ、このあたりでも自動車社会、より正確には自家用車社会になっているようで、バス転換しても沿線住民がどれだけ利用するのかはわかりません。鉄道を廃止してバスに転換したら利用客がさらに減少したという例もよく聞くところです。国鉄時代に、多くの地方の住民は鉄道を捨てたと言えるでしょう。何かの本に、住民が鉄道に捨てられたというようなことが書かれていましたが、決してそうではありません。そして、沿線自治体の多くも鉄道を捨てたのです。
日高本線の鵡川〜様似が廃止されると、苫小牧〜鵡川は残ることとなります。しかし、この残存区間の将来も何処まで読み通せるでしょうか。
もう一題は四国です。徳島県は徳島駅から海部駅まで、牟岐線という路線が伸びています。この路線の末端区間である阿波海南駅から海部駅までの廃止届が、8月11日にJR四国によって提出されました。
もっとも、こちらは純粋な廃止ではありません。海部駅から高知県の甲浦駅までの阿佐海岸鉄道阿佐東線に編入されることとなっています。しかもDMVが走ることとなっているのです。DMVといえばJR北海道が開発したものですが、主に経営問題のために実用化は断念されました。他方、DMVの導入を検討していた鉄道会社はいくつかあり、その一つが阿佐海岸鉄道でした。JRグループを除く鉄道会社の路線で最も利用客が少ないのが阿佐海岸鉄道阿佐東線で、起死回生というところでしょうか。あるいは、輸送量からDMVの導入という判断に至ったのでしょう。
ただ、実際にDMVの導入にどれだけのメリットがあるのでしょうか。私はDMVの実物を見たことがないのでよくわからないのですが、マイクロバスがベースになっているそうです。大人30人ほどが乗車するバスということでしょう。路線バスとして使用されるいすゞのエルガは大体80人から90人という定員のようですので、DMVの導入が決まったということは大型路線バスを導入するほどの需要がないということでしょう。徳島県南部および高知県東部の事情をよく知りませんが、通学路線としての性格が強ければ、マイクロバスでは輸送が間に合わないでしょうから、阿佐東線をDMVが走るということは、通学路線としての性格が弱いということかもしれません。もっとも、DMVの連結運転が可能であれば、より柔軟な対応もできます。それにしても、バスに道路走行用の機器と鉄道用の機器を搭載する訳ですから、一台あたりのコストは高くなるでしょうし、鉄道施設の維持にもかなりのお金がかかることは否定できません。
ちなみに、牟岐線の阿波海南〜海部が廃止されて阿佐海岸鉄道に譲渡される理由は、海部駅が高架駅であり、DMVが方向転換をするための施設を作るのにかなりの費用がかかるためである、という話です。日本はもとより世界でも初の試みがどうなるのか、気になります。
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