情報公開制度は、日本の行政にとっては厄介者なのでしょうか。結構、そのような例が多く見受けられるのです。今日も、たまたま、仕事中ですが休憩している時に、毎日新聞社が今日の2時30分付で「情報公開請求:渋谷区長が自粛要請 区議は反発」として報じている記事を見つけ、「一体何なんだ?」と思ってしまいました。しかも、渋谷区は2002年にも同じような問題を起こしています。
毎日新聞社が情報公開請求によって、8月29日に行われた渋谷区議会各会派の幹事会の議事録を入手したそうです。それによると、渋谷区長が渋谷区議会長(自民党、渋谷区では与党)に、8月11日、議会議員が情報公開制度の利用を「控える」ようにして欲しいと伝えており、区議会長はそれを各会派に伝えたようです。
当然、野党側から反発がありました。当然でしょう。渋谷区長・渋谷区議会長の要請は、情報公開条例に真っ向から反します。もっと訳がわからないのは取材に対する区長の説明で、「かつて区議の大量請求で職員が苦労したことがあった。議員を請求者から除外する条例改正は難しかったので、議会内で考えてほしいとお願いしてきた。4月に新しい議員が入り、また大量請求が出てきたので、改めてお願いした」という趣旨だったそうです。議員を請求権者から外す改正が「難しかった」のは当たり前で、これが許されるのであれば不合理な差別が許されてしまいますし、そもそも情報公開条例を制定すること自体に意味がないこととなります。渋谷区の条例が請求権者を区民に限っているのか「何人も」としているのかはわかりませんが、区民に限定しているとしても議員を除外する必然性はないのです。
また、区長や区議会長の側の「重箱の隅をつつくのではなく、新しい街づくりという観点から提言してほしい」という意見もわかりません。区長や区議会長が「重箱の隅をつつく」と感じても、それはそちらの感じ方だけかもしれません。重要な点を調べるにも「重箱の隅をつつく」ようなことをしなければわからないこともたくさんあります。
上記記事には、無所属の区議員、堀切稔仁氏のコメントが掲載されています。重要な点は「区議個人に特別な調査権はな」いということで、これについては、栃木県の矢板市の市議会議員を5期務めたという宮沢昭夫氏(無所属)も「少数会派の議員が議会を通じて情報開示を求めても、議長に許可されないことがある。そういう時に情報公開請求は有効な手段」であると述べています。議員に情報公開請求の自粛を求めることは、とくに少数会派の活動を封じることにつながります。議会のあり方として許されるものではありません。
地方議会は、ともすれば行政のチェック機関であることを否定します。どうかすると翼賛機関となるのです。これではまともな行政を期待できません。議事録などを見てもつまらないのは、議会が議会の役割を放棄しているからです。実質的にみれば日本の地方自治体の多くは、20世紀の社会主義諸国に見られた民主集中制を採用しているのではないかと思われることすらあります。昨年まで騒がれた、前阿久根市長の竹原信一氏が議会を敵視したのも理解できない訳ではない、とも言えます。
大量というのがどの程度なのかもわからないのですが、例えばコピーをしたら1万枚になるというのであれば、何らかの手を考えればよい訳です。大体、今、役所でもパソコンで文書を作成するのが通常でしょう。それならPDFなどのファイルで渡し、プリントアウトを請求者にやってもらえばよい訳です。明らかな濫用と見受けられない限り、情報公開請求を認めないのはおかしいでしょう。
それでも自粛を求めるというのであれば、思い切って渋谷区は情報公開条例そのものを廃止するのがよいでしょう。直ちに憲法違反にはならないはずですし、情報公開法に違反する訳でもありません。
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